ゼブラ、順天堂大・アラヤと筆記データでパーキンソン病検知AIを開発 最高精度91%を実証

センサー搭載ペンを使った筆記データ取得の様子

筆記具メーカーのゼブラ(東京・新宿区)は7月16日、順天堂大学、脳神経科学を活用したAI(人工知能)開発を手掛けるアラヤ(東京・千代田区)と、センサー搭載ペンで取得した筆記データを使って、パーキンソン病を検知するAI技術を開発したと発表した。

ゼブラが開発したセンサー搭載ペンを使って順天堂大学医学部附属順天堂医院のパーキンソン病患者50人と、年齢を合わせた健常者50人を対象に、15種類の筆記・描画タスクを実施した。このうち、ストロークの区切りが明確な8タスクを主要解析の対象とした。

ゼブラが開発したセンサー搭載ペン
ゼブラが開発したセンサー搭載ペン

センサー搭載ペンは、筆記時の速度、角度、筆圧、時間などのデータを取得できる。通常の筆記具のように紙に書きながら、筆記のプロセスをデータとして可視化する。

解析では、取得した筆記データを1画ごとのストローク単位に分割し、「書き始めの筆圧上昇フェーズ」「安定した筆圧水平フェーズ」「書き終わりの筆圧下降フェーズ」の3段階に分けた。

アラヤは、手書き動作からパーキンソン病を検知するAIモデルの構築と解析を担当。「1次元CNNモデル」に拡張畳み込み、残差接続などを組み込んだ独自のAIモデルを設計し、筆記時の特徴量を分析した。さらに、説明可能AI(XAI)の手法を使って、AIがどの特徴を根拠に判断したかを検証した。

筆記時の筆圧時間推移と筆記フェーズ
筆記時の筆圧時間推移と筆記フェーズ

分析の結果、筆圧とペン角度がパーキンソン病患者を識別する主要な特徴量であることが分かった。特に、書き終わりの筆圧下降フェーズで、筆圧とペン角度の重要度が高い傾向がみられた。2種類のXAI手法でも、筆圧とペン角度が重要な特徴量として共通して示されたという。3者は、パーキンソン病でみられる運動終了時の力の解放の難しさと関係する可能性があるとしている。

8種類のタスクを使ったAIモデルの全体的な検出精度は83%だった。「2本の平行線の間に文章を書く」というタスクでは、最高で91%の検出精度を示した。線の間に書く制約が、視空間処理や注意、運動実行の負荷を高め、パーキンソン病特有の特徴を引き出した可能性があるという。

パーキンソン病の診断は、専門医による観察や評価尺度に依存する部分が大きい。3者は、日常的な「書く」という動作を活用することで、客観的で簡便な診断支援につながる可能性があるとみている。

アラヤでは、医療AIを臨床現場で活用するには、診断精度だけでなく、AIがなぜ判断したかを説明できることが重要だとしている。今回の研究では、AIの判断根拠を可視化し、医師が検証しやすい形で示した。ゼブラは今後、研究成果を基に、センサー搭載ペンの医療分野での社会実装を目指す。