フィリップス、心臓カテーテル治療用画像処理技術「SmartIQ Technology」販売開始 被ばく・造影剤を低減

プレスセミナーに出席した(左から)マータイン・ファン・デル・ボム・フィリップス・ジャパンIGT Japanビジネスリーダー、中村茂・京都桂病院心臓血管センター所長、安部 美佐子・フィリップス・ジャパン社長、土井優太・フィリップス・ジャパンIGTシステムズモダリティセールススペシャリスト

フィリップス・ジャパン(東京・港区)は7月14日、心臓カテーテル治療向け血管撮影システム「Azurion(アズリオン)」専用の画像処理ソフトウエア「SmartIQ Technology(スマート・アイキュー・テクノロジー)」の販売を開始したと発表した。同日には、報道関係者向けにプレスセミナーを開き、画像処理の仕組みと京都桂病院での導入事例を紹介した。

「SmartIQ Technology」は、主要な心血管センターとの共同開発で生まれた冠動脈向けの画像処理技術。専用端末を使って利用する。リアルタイムでX線画像の処理を行い、血管や治療デバイスの視認性を高めることで、患者と医療従事者のX線被ばく線量や、患者に投与する造影剤の使用量を低減する。新規の装置だけでなく、既存の「Azurion」にも導入できる。

「Content-Aware imaging algorithm」の画像処理フロー
「Content-Aware imaging algorithm」の画像処理フロー

中核となるのが、「Content-Aware imaging algorithm(コンテント・アウェア・イメージング・アルゴリズム)」と呼ぶ画像処理技術だ。X線物理学の基本原理と臨床データを組み合わせて開発した独自の画像処理アルゴリズムで、画像内の血管や治療機器などの必要な情報と、骨や背景、ノイズをリアルタイムで分離して処理する。

血管や治療機器にはコントラストを強調する処理を加え、背景には強いノイズ低減処理を適用した上で画像を再構成する。AI(人工知能)による学習型の画像処理は行わない。

土井優太・フィリップス・ジャパンIGTシステムズモダリティセールススペシャリスト
土井優太・フィリップス・ジャパンIGTシステムズモダリティセールススペシャリスト

土井優太・フィリップス・ジャパンIGTシステムズモダリティセールススペシャリストは「AIは診断や治療に必要な情報を画像処理によって消したり、実際には存在しない情報を表示したりするリスクがある。緊急度が高い医療現場で使うことは難しい。そのため、あえてAI技術は使っていない」と説明した。

画像情報の整合性を保持する機能「SafeGuard(セーフガード)」も備える。画像処理後の画像とオリジナル画像を常に照合し、強いノイズ低減処理を加えた場合でも、臨床的に重要な情報を維持する。

また、極めて低い線量でも鮮明な画像表示を可能にする「Ultralow Dose(ウルトラロー・ドーズ)プロトコル」を搭載した。X線被ばく量を従来の最低線量設定より50%以上低減できるという。

さらに、低濃度の造影剤を使う場面に対応する「Low Contrast(ローコントラスト)プロトコル」を搭載した。血管などの必要なコントラストを選択的に強調することで、造影剤の濃度を下げた場合でも画像品質を維持できる。術者は患者の状態や手技の内容に合わせ、ベッドサイドで撮影プロトコルを選択できる。

「Ultralow Dose」でX線量を76%低減した撮影例
「Ultralow Dose」でX線量を76%低減した撮影例

同社はセミナーで、従来設定と比べてX線量を76%低減した撮影例を示した。造影剤と生理食塩水を1対1で混合した50%濃度の造影画像も提示し、原液の造影剤を使用した画像と比べても、冠動脈や細い血管の視認性を保てることを強調した。

中村茂・京都桂病院心臓血管センター所長
中村茂・京都桂病院 心臓血管センター所長

セミナーでは、「SmartIQ Technology」を使用する京都桂病院(京都市)の中村茂・心臓血管センター所長が使用経験を説明した。同院では2026年1月から導入している。

中村所長は「同じ患者を従来設定と『SmartIQ Technology』で撮影した院内比較例では、撮影回数が15回から22回に、透視時間が約6分から約10分に増えた一方、被ばく線量は42%減った」と話した。

腎機能が低下した患者の検査や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で、50%濃度に希釈した造影剤を使用した症例も紹介した。この症例では「造影剤の使用を抑えながら、狭窄の評価やガイドワイヤーの操作に必要な画像を確認できた」(中村所長)という。

中村所長は「複雑病変の治療は長時間になり、ワイヤー操作は基本的に透視下で行う。低線量の透視でもよく見える装置は、安全な治療に貢献する」と、「SmartIQ Technology」を評価した。

一方で、造影剤は希釈すると粘度が下がり、血管内から流れ去る速度が速くなる。中村所長は「太い冠動脈では十分に造影するために注入量を増やす必要があり、造影剤の削減効果が小さくなる場合もある」と説明。その上で「患者の状態や血管の太さ、治療内容に応じた使い分けが必要」との見方を示した。

マータイン・ファン・デル・ボム・フィリップス・ジャパンIGT Japanビジネスリーダー
マータイン・ファン・デル・ボム・フィリップス・ジャパンIGT Japanビジネスリーダー

マータイン・ファン・デル・ボム・フィリップス・ジャパンIGT Japanビジネスリーダーは「『SmartIQ Technology』は、医師の臨床経験や専門性に取って代わるものではない。複雑化する治療で、医師がより確信を持って意思決定できるよう支援する技術だ」と話した。

フィリップス・ジャパンは今後、日本心血管インターベンション治療学会の「CVIT 2026」をはじめとする学会で「SmartIQ Technology」の画像を展示。医療従事者に対し、高画質と低線量、造影剤使用量の低減を支援する機能を訴求していく考えだ。