北九州総合病院、NMISとサイボウズの業務支援ソフトで医療データ登録システム「MEDITAL」開発
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サイボウズは5月29日、北九州総合病院(福岡・北九州市)が、日本メディカル情報サポート(NMIS)と、業務支援ソフト「kintone(キントーン)」を活用し医療データ登録ソリューション「MEDITAL(メディタル)」を開発したと発表した。AI-OCR(人工知能を使った光学文字認識)技術を組み合わせ、骨折患者のレジストリ登録にかかる入力作業を1症例あたり最大30分から5~6分に短縮した。同日にはメディア向けセミナーも開催した。

「MEDITAL」は、タブレットで電子カルテの画面やレジストリ用フォーマットを撮影し、AI-OCRで読み取ると、生成AI(人工知能)が必要な項目を抽出して院内に構築したデータベース(DB)に登録する。院内DBの基盤にはキントーン、生成AIにはグーグルの「ジェミニ」を利用する。AI-OCRの処理はクラウド上で実行するが、撮影データは端末に残さず、処理後に削除する設計にした。

院内DBに登録したデータは、日本脆弱性骨折ネットワーク(FFN-J)にネットワーク経由で連携できる。回復期の病院などに、30日後、120日後、365日後に自動的に通知メールを送り、入力された情報を院内DBに同期し、FFN-Jのレジストリに自動転送する機能も備える。検討から開発・検証まで約1年をかけた。費用は非公開。

整形外科領域では、高齢化に伴い患者数が増える中、診療報酬制度の変更で、FFN-Jへの症例登録が評価要件の1つとなった。そのため、登録には急性期の入院時、手術時、退院時に加え、回復期・生活期の30日後、120日後、365日後の状態といった多職種にまたがる情報の収集が必要になる。
北九州総合病院は、整形外科で大腿(だいたい)骨近位部骨折など骨粗しょう症関連の骨折治療に取り組んでいる。同院では、電子カルテや紙資料、エクセルなどに情報が分散していることに加え、回復期や生活期の情報を電話やファクスで確認するケースもあり、レジストリ登録が医師事務作業補助者や医療事務の大きな負担になっていた。

北九州総合病院の福田文雄副院長は、「特に電子カルテはデータベースではなく、巨大な自由作文集に近い。テキストはあっても構造化されていないため、必要な項目を拾い集める作業が発生して負担になっていた」と説明した。
同院では、この課題を解決し、診断・治療データの収集業務効率化を図るため、レジストリ登録ソリューションの開発に着手した。開発では、最初から完成形を決め込まず、プロトタイプを作りながら現場の反応を反映した。担当した日本メディカル情報サポートの鈴木孝充取締役は「当初は複数のレジストリに共通する項目を一つのデータベースにまとめる構想から始めた」と説明する。
しかし、入力担当者からは「入力の手間が変わらなければ便利ではない」との反応があった。そこで、入力作業そのものを簡素化する方向に見直した。その後、電子カルテ画面だけを撮影し読み取る仕組みを検討したが、必要な情報の所在を医師やベテラン職員しか把握していない場合があり、医師の作業が増える懸念が出た。

最終的には、電子カルテの画像やレジストリ用フォーマットをAI-OCRで読み取り、レジストリ登録に必要な項目としてDBに取り込む仕組みを採用し、医師の仕事を増やさず医師事務作業補助者の業務を効率化する形に落とし込んだ。

鈴木取締役は「1~2週間単位でプロトタイプを作り、フィードバックを受けながら改善した。このスピード感に対応でき、簡単にシステム開発ができる基盤としてキントーンは有効だった。実際に触れる環境を作り、病院側と良しあしを話せたことも開発で役立った」と語った。
完成したシステムでは骨折患者のレジストリ登録の入力作業を1症例あたり最大30分から5~6分に短縮できた。作業時間の短縮に加え、入力漏れや表記揺れの抑制、担当者の心理的負担の軽減にもつながっているという。福田副院長は「われわれの世界では手入力が当たり前だった。今回、AI-OCRで読み込んだデータを確認し、そのまま症例登録ができるようになった。医療業界にとって画期的なシステムだ」と語った。
北九州総合病院では、「MEDITAL」による効率化で生まれた時間を、医師事務作業補助者が診察室で医師と患者の会話を記録する業務などに振り向ける考えだ。福田副院長は「業務効率化なしでは、質の高い医療を提供し続けることは難しい」と、医療従事者が治療に注力できる環境づくりの必要性を強調した。
今後は、FFN-Jのレジストリ登録施設への導入を進めるほか、日本整形外科学会症例レジストリ(JOANR)への展開も見込む。福田副院長は「まずは大腿骨近位部骨折のMEDITALを全国展開し、今年中に100病院へ導入したい」と述べた。将来的には、がん登録や手術登録などの他診療科への横展開、電子カルテベンダーとの連携も視野に入れている。
福田副院長は、「MEDITAL」の開発を通じて、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導く要点として、課題の抽出、業務の見える化、負荷の定量化、小さなPoC(概念実証)、横展開の5つを挙げた。「まずは、病院内の困りごとに対して、誰が、どの業務に、どれだけの時間を費やしているのかを言語化することが出発点になる」と語る。
また、医療DXではITベンダーとの関係づくりも重要と指摘。医療現場の課題とIT側の技術をつなぐには、医療用語とIT用語を相互に翻訳し、現場の負担を減らしてよりよい医療を実現するという目標を共有する必要があるという。その上で「実際に現場を見て、どこに問題があるかを把握してもらうことが大切」と強調した。