富士通、自己進化マルチAIエージェント技術を開発 医療文書抽出や電子カルテ仕様検索で有効性確認

富士通は5月25日、複数のAI(人工知能)エージェントが業務を進めながら、実行結果や人のフィードバック、制度改定、仕様変更などを踏まえて継続的に学習する技術「自己進化マルチAIエージェント技術」を開発したと発表した。医療分野では、診療記録や検査結果といった非構造データから、診断名、進行度、治療方針などを一貫した形式で情報抽出・構造化できるという。

開発したのは、業務実行の結果や人のフィードバック、制度改定や仕様変更などの変化を取り込みながら、継続的に安全に進化するマルチAIエージェント技術。

自己進化マルチAIエージェント技術の概要
自己進化マルチAIエージェント技術の概要

AIエージェントが業務を遂行しながら成功・失敗の理由を整理し、次に生かすべき知識や行動のコツを抽出し、生成した改善案をそのまま記憶するのではなく、品質や安全性を検証した上で、有効なものだけを学習する。

そのため、従来は専門家が継続的に行っていたプロンプト調整や評価基準の更新といった作業を、AIエージェント自らが行える。また、AIを顧客環境内に配置することで、業務運用の中で発生する個別ルールや判断基準にも継続的に適応できる。

自己進化マルチAIエージェントを使った業務特化型LLM「Takane」の自動強化・継続改善の概要
自己進化マルチAIエージェントを使った業務特化型LLM「Takane」の自動強化・継続改善の概要

富士通では、業務特化型LLM(大規模言語モデル)「Takane(タカネ)」で、同技術を使って製造、医療、金融、行政など複数領域で自動強化と継続改善を進めた。その結果、業務特化前と比べて平均28ポイントの精度向上を確認した。

医療分野での検証では、診療記録や検査結果といった非構造データから、診断名、進行度、治療方針などを一貫した形式で抽出するタスクで、業務に沿った情報抽出や構造化が可能となったという。同社は、これまでは専門知識に基づく設計や調整が必要だった業務特化型LLMの構築・改善プロセスを、マルチAIエージェントが代替し、運用の中で継続的に最適化できることを示せたとしている。

また、大中規模病院向け電子カルテシステム「HOPE LifeMark-HX(ホープ・ライフマーク・エイチエックス)」の設計仕様書群を対象に、AIエージェント型文書検索に技術を適用したところ、法改正や制度改定に伴うソフトウエア改修の影響範囲を特定する作業で、AIエージェントが過去の検索結果や失敗事例、人の修正内容を学習しながら、探索範囲の拡張や関連文書の抽出戦略を自律的に改善した。

この結果から、従来は専門家が試行錯誤を繰り返して構築していた検索ロジックの設計・改善プロセスの自動化と、学習・改善工数の削減、精度向上を確認した。

富士通は今後、この技術を専有型AIプラットホーム「Fujitsu Kozuchi Enterprise AI Factory(フジツウ・コズチ・エンタープライズ・エーアイ・ファクトリー)」に組み込み、業務特化AIの内製化と自律運用を支援する中核技術として提供する。同時に、少ないメモリと電力で動作する技術開発を進め、クラウドだけでなく、機密性が高い現場のオンプレミス環境やエッジ環境でも利用できることを目指す。