ウィーメックス、クラウド・AI時代の電子カルテ市場に対応 レセコンの知見生かし医療DX支援を強化
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クラウド化や生成AI(人工知能)活用、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)政策への対応など、電子カルテ市場を取り巻く環境は大きく変化している。こうした変化の中で、50年以上にわたりレセプトコンピューターの開発を手掛けてきたウィーメックスは、診療所向けを中心に病院向けも含めた幅広い電子カルテ製品群を展開している。
同社は市場の変化をどのように捉え、どのような製品戦略を描いているのか。松永錦弥・ウィーメックス ヘルスケアIT事業部 プロダクト企画部(部長)、神澤嘉範・ヘルスケアIT事業部事業戦略部ヘルスケア戦略課(課長)に話を聞いた。(医療テックニュース編集部 編集長 米谷知子)
診療所・病院向けに電子カルテ3ブランドを展開
ウィーメックスは、「Medicom(メディコム)」「Hi-SEED(ハイシード)」「Open-Karte(オープンカルテ)」の3ブランドで電子カルテを展開している。
診療所向けでは、レセプトコンピューターと一体的に利用できる「Medicom クラウドカルテ」「Medicom-HRf Hybrid Cloud」、ORCA連携型の「Hi-SEED」「Hi-SEED Cloud」などを提供している。
病院向けでは、中小規模病院向けの「Medicom-CKII」、小規模病院向けの「Medicom-HSf」、精神科病院向けの「Live」、中小規模病院向けの「Open-Karte」シリーズなどを展開している。
診療所向けから病院向けまで幅広いラインアップをそろえていることが同社の特長の一つで、医療機関の規模や運用形態に応じた提案を行っている。

強みは50年超の歴史を誇る、レセコン開発で培った知見
同社の事業を支えているのが、50年以上にわたり培ってきたレセプトコンピューター開発の知見だ。特にMedicomブランドでは、電子カルテとレセプトコンピューターを一体的に提供する「医事一体型」を採用している。
診療報酬制度は原則2年に1度改定されるうえ、算定ルールも複雑化している。そうした中で、長年蓄積してきたレセプト業務のノウハウを電子カルテ開発にも活用している。実際に顧客からは、直感的な操作性や分かりやすい画面設計に加え、診療報酬を漏れなく算定できる仕組みや算定支援機能が評価されているという。
「医療機関では、使いやすさと同じくらい、適切に診療報酬を算定できることが重要です。当社はレセコンの開発で培った知見を強みとしており、そのノウハウを電子カルテにも生かしています」(松永氏)。
電子カルテ市場、「クラウド化」「AI活用」「医療DX政策対応」が主要テーマに
近年、電子カルテ市場ではクラウド化に加え、AI活用や医療DX政策への対応などが大きなテーマとなっている。
同社によると、特に新規開業のクリニックではクラウド型電子カルテを選択するケースが増えているという。また、既存システムの更新時にも、次期システムとしてクラウド型を検討する医療機関が増加している。背景には、初期費用の抑制だけでなく、運用負荷の軽減やモバイル利用への対応、操作性向上などがある。
こうしたニーズに対応するため、同社は2025年にクラウド型電子カルテ「Medicom クラウドカルテ」を投入した。長年培ってきた医事会計領域のノウハウをクラウド環境でも提供できるよう開発した。
一方で、すべての医療機関がクラウド型電子カルテを求めているわけではない。カスタマイズ性や効率性を重視する医療機関向けには、クラウド型とオンプレミス型の双方のメリットを兼ね合わせたハイブリッド型の「Medicom-HRf Hybrid Cloud」を提供している。さらに、ORCAユーザー向けには「Hi-SEED Cloud」も展開している。
「クラウドへのニーズは確実に高まっていますが、その理由や求める価値は医療機関ごとに異なります。当社ではクラウド型とハイブリッド型の双方を提供し、多様なニーズに対応しています」(松永氏)。
電子カルテを軸に予約・問診・決済を一体支援
ウィーメックスは、電子カルテの提供だけではなく、医療機関のDX支援領域にも注力している。その象徴的な取り組みが、2025年4月に提供を始めた「Medicom 診療支援」だ。同サービスは、ウェブ予約やウェブ問診、オンライン決済などを提供し、電子カルテと連携して利用できる。
患者の予約や事前問診の入力、受診後の決済までの一連の流れをデジタル化することで、医療機関の業務効率化と患者利便性の向上を支援する。

同社によると、近年は電子カルテ単体ではなく、周辺業務を含めたDXへの関心が高まっているという。人手不足や業務負担の増加を背景に、受付や会計業務を含めた業務全体の効率化を求める声が増えている。
「医療機関からは、予約や問診、決済などを含めて業務全体を効率化したいというニーズが増えています。電子カルテだけではなく、そうした周辺サービスも含めて支援していくことが重要だと考えています」(松永氏)。
現在はオンライン診療との連携も進めており、患者接点から診療、会計までを一体的に支援するサービス基盤の構築を目指している。今後も患者向けサービスの充実を図り、電子カルテを中心としたDX基盤の強化を進めていく考えだ。
AI活用と政策対応が競争軸に
電子カルテ市場では、AI活用と医療DX政策への対応も重要なテーマとなっている。
ウィーメックスでは、「Medicom クラウドカルテ」にAIによる診療報酬算定チェック機能を搭載している。診療内容に応じて算定漏れの可能性を確認できる機能で、請求業務を支援する。AIを活用した音声による診療記録作成支援にも対応する。SOAP(主観、客観、評価、計画)形式の記録作成を支援することで、医療従事者の入力負担軽減を図る。
同社によると、AIに対する期待は医療機関によって異なるという。病院では紹介状や診断書などの文書作成業務が多いことから、AIを活用した文書作成支援への関心が高い。
一方、診療所では日々の診療や会計業務の効率化が重視される傾向にあり、カルテ入力や診療報酬算定支援など、業務負担軽減や収益改善につながる機能へのニーズが大きいという。
さらに同社では、「電子カルテ情報共有サービス」や「共通算定モジュール」への対応も進めている。「共通算定モジュール」は、診療報酬算定機能の標準化を目指す国の取り組みの一つ だ。同社は厚生労働省が推進するモデル事業にも参画しており、制度開始を見据えた準備を進めている。
「『電子カルテ情報共有サービス』と『共通算定モジュール』は、今後の医療DX政策の中核となる仕組みです。医療機関の日常業務にも大きな影響を与えるため、着実に対応していく必要があります」(松永氏)。制度改正や標準化が進む中、政策対応力も電子カルテベンダーの重要な競争力になりつつある。
同社は、2026年5月には電子処方箋の累計導入数が2万5000件を突破し、「電子カルテ情報共有サービス」の本格的な運用開始に向けた取り組みも推進をしている。
また、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」や「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」などを背景にセキュリティー強化に対する顧客の関心が高くなっている。それに対して同社では、「サイバーセキュリティ レポートサービス」や「二要素認証/USB接続制限 ソフトウェア」など医療機関・薬局の現場ニーズに即したセキュリティサービスを提供している。
「昨今、医療機関におけるサイバーセキュリティー対策に関する関心は非常に高まっています。『サイバーセキュリティレポートサービス』や『二要素認証/USB接続制限 ソフトウェア』はそのニーズにお応えできるサービスとして推進を図っています」(神澤氏)。
電子カルテの役割は「記録」から「医療DX基盤」へ
ウィーメックスは、今後の電子カルテ市場において、クラウド化とAI活用が引き続き進展するとみている。
また、同社が注目しているのがオンライン診療を取り巻く環境の変化だ。2026年4月には、患者がオンライン診療を受ける場所として提供される「オンライン診療受診施設」の医療法上の規定が施行された。そのため、医療機関以外の場所でもオンライン診療を受けられる環境整備が進む可能性がある。
同社では、こうした変化を受け、電子カルテも診療記録を管理するシステムにとどまらず、オンライン診療を含むさまざまなサービスと連携する医療DXの基盤へと役割が広がっていくとみている。
「ここ1~2年で医療DX政策は非常に速いスピードで進んでいます。オンライン診療も含め、医療のあり方そのものが変わりつつあります。こうした変化を、電子カルテをはじめとするヘルスケアITソリューションを提供する企業としてどのようにサービスへ取り込んでいくかが重要になると考えています」(松永氏)。
こうした変化を見据え、同社は電子カルテを核に周辺サービスとの連携を強化し、医療機関の業務全体を支える基盤づくりを進めていく考えだ。