品川区医師会、会員向け電子カルテ紹介イベントを初開催 紙カルテ診療所や更新検討クリニックが参加

品川区医師会は紙カルテを使う診療所や電子カルテの入れ替えを検討するクリニック向けに電子カルテを紹介するイベントを初めて開催した(東京・品川区)

品川区医師会(東京・品川区)は4月20日、紙カルテを使う診療所や電子カルテの入れ替えを検討する会員向けに、電子カルテを紹介するイベントを開催した。会場では電子カルテベンダー5社が製品を展示したほか、上野智明・ORCA管理機構取締役副社長が、国が進める医療DX(デジタルトランスフォーメーション)と標準型電子カルテの方向性を解説した。政府が2030年までに、おおむねすべての医療機関で電子カルテの導入を目指す中、品川区医師会も対応を迫られており、地域の診療所が導入や更新を具体的に検討できる場を提供した。

イベントには、診療所向け電子カルテを手掛けるNTTプレシジョンメディシン、エムスリーソリューションズ、ウィーメックス、DONUTS(ドーナツ)、セコム医療システムが出展した。

NTTプレシジョンメディシンのブース
NTTプレシジョンメディシンのブース

NTTプレシジョンメディシンはクラウド型電子カルテ「movacal.clinic(モバカルクリニック)」で、開発中の音声入力した診察記録をAI(人工知能)が要約する機能を訴求した。

ウィーメックスのブース
ウィーメックスのブース

ウィーメックスは「Medicom(メディコム)」を紹介し、オンプレミス型、ハイブリッド型、クラウド型をそろえる点や、クラウド型で医事一体型システムを提供している点などをアピールした。

セコム医療システムとDONUTSのブース
セコム医療システムとDONUTSのブース

エムスリーソリューションズは「エムスリーデジカル」、DONUTSは「CLIUS(クリアス)」、セコム医療システムは「セコムOWEL(オーウェル)」を展示。会員は各社の説明を受けながら導入や更新の選択肢を比較した。

イベントに参加した金城医院の金城謙太郎院長は「今導入しているレセコン一体型の電子カルテで保険請求部分の不具合が多く、代わりの製品の検討で参加した。価格と使いやすいものを選びたい」という。

品川区医師会理事も務める星野健・星野医院院長は「まずはクラウド対応が選択のポイント。マックユーザーなのでクラウドならマックでもブラウザで利用できる。もう1つはモバイル対応。病院外でも電子カルテを見られるものがいい」と話した。

上野智明・ORCA管理機構取締役副社長が「医療DXと標準型電子カルテ」をテーマに講演
上野智明・ORCA管理機構取締役副社長が「医療DXと標準型電子カルテ」をテーマに講演

イベントでは、上野智明・ORCA管理機構取締役副社長が「医療DXと標準型電子カルテ」をテーマに講演も行った。

上野智明・ORCA管理機構取締役副社長
上野智明・ORCA管理機構取締役副社長

上野取締役副社長は、「国が2027年春に『標準型電子カルテ導入版』を提供する予定」と話した。また、「『標準型電子カルテ導入版』は、国の標準仕様に沿った『標準型電子カルテ』とは異なり、紙カルテを使う診療所や既存システムを利用する医療機関が、電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋などの医療DXに対応するための仕組み」と説明した。

さらに、「既存の電子カルテを使っている医療機関でも、導入版を併用することで国の医療DXに対応しやすくなる」と話す一方、「費用や補助金の詳細は未定で、電子カルテの更新時には国の標準仕様に対応できるかどうかを見極める必要がある」と警鐘をならした。

品川区内の医療機関では電子カルテの普及が一定程度進んでいる。品川区全体では病院が16施設中15施設、診療所は470施設中303施設が導入済みという。一方で、未導入の診療所もまだ残っており、2030年を見据えると対応の後押しが課題になっている。こうした状況を踏まえ、品川区医師会では会員向けの電子カルテ紹介イベントを初開催した。

三浦和裕・品川区医師会会長(三浦医院院長)
三浦和裕・品川区医師会会長(三浦医院院長)

三浦和裕・品川区医師会会長(三浦医院院長)は、導入が進まない背景を「『紙の方が早い』『既存のやり方を変える必要を感じない』といった意識面に加え、導入費用やランニングコスト、メンテナンス対応、職員の負荷、診療に追われ、検討の時間が取れないことなどがある」と指摘した。

受付や事務の現場で来院時の患者登録や会計に伴う入力業務など新たな運用負担が生じることも壁になっているといい、「現場の事務体制が追いつかなければ定着しにくい」と説明した。「導入費用の問題も挙げられるが、それよりも導入後の運用で引っかかっている」という。

三浦会長は、東京都医師会の医療情報検討委員会の活動で電子カルテ関連イベントに関わり、大井町の回では自ら講師も務めた。その際、参加者が想定ほど集まらず、危機感を抱いたことが今回の開催につながったという。委員会での経験を通じて、「電子カルテに不慣れな会員ほど情報収集の機会自体を逃しやすい悪循環がある」(三浦会長)とみて、今回は紙ベースでも案内した。

医師会としては、今後も特定製品を推奨せず、会員が複数ベンダーの実機を見て比較検討ができる機会を設けていく方針。三浦会長は「会員に必要であれば、こういう会をやり続けるしかない」と話す。

一方で、休日診療所や訪問看護ステーションなど医師会の事業で電子カルテを実際に試し、そこで得た知見を会員に還元していくことにも取り組む考えだ。三浦会長は「『これ良かったよ』『これはあまり使えないよ』といった個々の製品の使い勝手や課題を会員間で共有することが重要」と強調した。