名城大など、緊急内視鏡による止血の要否を予測するAI開発 当直医の負担軽減へ

名城大学(名古屋市)は9月28日、名古屋大学医学部附属病院、名古屋第一赤十字病院、江南厚生病院と、血液検査や血圧などの診療データから、緊急内視鏡による止血処置の要否を予測するAI(人工知能)システムを開発し、従来のリスク評価法を上回る予測性能を確認したと発表した。名城大理工学部メカトロニクス工学科の大原賢一教授らが開発した。AIが治療の優先順位の判断を支援し、夜間・休日の当直医の負担軽減につなげる。

緊急内視鏡による止血処置の要否を予測するAIシステムの概要
緊急内視鏡による止血処置の要否を予測するAIシステムの概要

AIは、機械学習手法「XGBoost(エックスジーブースト)」を採用しており、年齢や血圧、脈拍、ヘモグロビン、アルブミン、BUN(尿素窒素)、クレアチニンなどの検査値、既往歴、服薬歴など約30項目から予測する。胃・十二指腸潰瘍など、食道・胃静脈瘤(りゅう)以外の原因で出血する「非静脈瘤性上部消化管出血(NVUGIB)」の患者を対象にする。

AIモデルの構築から評価までの流れ(出典:Kurodaほか、BMC Medical Informatics and Decision Making、2026年)
AIモデルの構築から評価までの流れ(出典:Kurodaほか、BMC Medical Informatics and Decision Making、2026年)

開発では、名大病院、名古屋第一赤十字病院、江南厚生病院の3施設で、2016~2020年に診療を受けた患者1989人分のデータを使用。2016~2019年のデータで学習し、2020年の患者358人分のデータで性能を検証した。

予測性能を示す指標「AUROC」は0.822で、従来のNスコアの0.776、弘前スコアの0.728、HARBINGERの0.658、グラスゴー・ブラッチフォードスコア(GBS)の0.576を統計的に有意に上回った。AUROCは1に近いほど、処置が必要な患者と必要でない患者を正しく区別できることを示す。

医療機関の方針に応じ、判定基準となるしきい値を調整できる仕組みも組み込んだ。見逃しを減らすことを重視した設定では、止血処置が必要な患者を検出する感度が89.5%となった。

名城大などの研究グループは、予測に対する各項目の寄与を評価する解析手法「SHAP(シャープ)」を使った解析も実施。BUNとクレアチニンの比率やNスコア、リンパ球数、年齢、アルブミンなどが予測に重要であることも突き止めた。

研究グループでは、開発したAIについて、医師が限られた地域での救急医療体制の維持に役立つとみている。また、緊急の止血処置が必要な患者を早期に見分け、治療の優先順位の判断を支援するシステムで、緊急内視鏡の総数の削減を目的としていないと説明している。

今回のAIは、国内3施設で緊急内視鏡を受けた患者のデータのみで開発された。そのため、研究グループでは、今後は対象地域や施設を広げた検証と、実際の診療現場で患者を追跡する前向き研究を進め、実用化を目指すとしている。