アイラト、放射線治療の現状・課題解説 IMRT計画支援AI紹介

セミナーでは東北医科薬科大学が導入する高精度放射線治療装置「リニアック」も紹介した

東北大発の医療機器ベンチャーのアイラト(仙台市)は4月22日、がん放射線治療のメディア向けセミナーを、仙台市にある東北医科薬科大学で開催した。同社はAI(人工知能)を活用したがん放射線治療の計画作成を支援するソフトウエアを開発する。セミナーでは、東北医科薬科大学の医師が、がん放射線治療の現状や課題を解説したほか、放射線治療計画AI支援ソフトについて紹介した。

冒頭、石川陽二郎・東北医科薬科大学放射線医学准教授が、臨床現場から見た放射線治療の現状と課題について説明した。

石川陽二郎・東北医科薬科大学放射線医学准教授
石川陽二郎・東北医科薬科大学放射線医学准教授

石川准教授は、一般に放射線治療は手術や抗がん剤治療に比べて十分に知られておらず、使われる装置や治療の仕組みへの理解も広がっていないと訴えた。その上で、放射線治療で主に使う高精度放射線治療装置「リニアック」を紹介した。

「リニアック」のX線照射部分
「リニアック」のX線照射部分

装置は、レントゲン検査やCT(コンピューター断層撮影装置)検査と同じX線を治療に使用すると説明。「CT検査を受けられる人であれば、ほぼ放射線治療を受けられる」と述べ、幅広い患者に適用しやすい治療法であることを強調した。

石川准教授は、老衰で亡くなる高齢者の中にもがんを抱えた人が少なくなく、高齢患者への治療対応が課題と指摘した
石川准教授は、老衰で亡くなる高齢者の中にもがんを抱えた人が少なくなく、高齢患者への治療対応が課題と指摘した

また、日本では死亡原因の上位を悪性新生物(がん)が占める一方、超高齢化に伴って老衰が大きな割合を占めるようになっていると指摘。石川准教授は、「老衰で亡くなる高齢者の中にも、がんを抱えたまま経過する患者は少なくない」と話し、今後は手術が難しい高齢患者の対応が一段と重要になるとの見方を示した。

そして、放射線治療は、体力や年齢の面から外科手術が困難な患者でも適用を検討しやすく、通院で治療を続けられるケースが多いことから、「高齢患者にとって有力な選択肢になる」と語った。さらに、「放射線治療は臓器を温存しながら治療できる可能性があり、近年は強度変調放射線治療(IMRT)による治療の精度が増し、副作用の低減や疾患領域の適応拡大が進んでいる」と話した。

一方で、IMRTをはじめとする高度な放射線治療には、高度な技術と経験が必要で、医療機関や地域によって実施体制にも差がある点を課題に挙げた。また、「主力装置のリニアックは高額で、装置導入や施設整備には病院に大きな費用負担が伴う点も課題になっている」と話した。最後に陽子線治療についても触れ、こちらも多額の設備投資と専門人材が必要なことが普及の課題になっていると語った。

続いて、アイラトの角谷倫之・代表取締役が、同社が開発するAIを活用したIMRTの計画作成支援ソフト「RatoGuide(ラトガイド)」を紹介した。

角谷倫之・アイラト代表取締役
角谷倫之・アイラト代表取締役

IMRTは、コンピューターで放射線の照射角度や強度、形状などを細かく制御し、がんに集中して照射しながら正常組織への影響を抑える技術。治療効果は高い一方、綿密な照射計画を専門医が策定する必要があり、作成には時間もかかる。

「RatoGuide」の画面イメージ。
「RatoGuide」の画面イメージ。

「RatoGuide」は、IMRTの計画作成で、輪郭抽出や照射領域の決定、計画通りの線量が照射されるかを確認する安全性検証をAIが支援する。

AIが輪郭抽出や照射領域の決定、安全性検証を支援し、計画作成を約20分に短縮する
AIが輪郭抽出や照射領域の決定、安全性検証を支援し、計画作成を約20分に短縮する

東北大病院や山梨大学病院など協力関係にある大学病院から提供された90万件の治療データを読み込んでおり、一般的に約6時間かかる治療計画を、ソフトを使うことで20分程度に短縮できる。

石川准教授は「放射線治療計画は輪郭の描出などに時間がかかる作業」と話す
石川准教授は「放射線治療計画は輪郭の描出などに時間がかかる作業」と話す

角谷代表取締役は、「欧米では放射線治療を受ける患者の6~7割にIMRTが使われているのに対し、日本では2割台にとどまり普及が遅れている。その背景には計画作成の負担の大きさがある。この課題を解決していきたい」と語った。

現在は頭頸(とうけい)部がん、肺がん、前立腺がん、子宮頸(けい)がんの治療を対象に、薬事承認を申請している。また、東京女子医大病院や北里大病院など国内10施設の大学病院で性能評価を実施している。さらに、海外でもマレーシアやタイで評価を進めるほか、シンガポール国立がんセンターとの共同研究も開始した。角谷代表取締役は「現在は業務効率化の側面が強いが、今後はAIの精度を高め、治療効果の向上でも強みを発揮していきたい」と抱負を述べた。