電子カルテの選定ニーズはどう変わる? 病院・診療所調査から探る次の商機

医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や医療従事者不足を背景に、電子カルテに求められる役割が広がっている。診療記録やオーダーなどの基盤機能に加え、文書作成の効率化、医療安全、院内外の情報連携、データ活用などを、電子カルテを起点に実現しようとする動きがみられる。

生成AI(人工知能)やクラウド型電子カルテへの関心も高まり、ベンダー各社による新たな機能・サービスの開発が進む。しかし、注目を集める技術や機能が、そのまま医療機関の選定理由になるとは限らない。

シード・プランニング(東京・文京区)では、2026年版の電子カルテ・PACS(医療用画像管理システム)市場調査の一環として、病院119件、診療所102件の計221件を対象にウェブアンケート調査を実施した。電子カルテの導入状況や現在の課題、更新意向、リプレイス時の重視点、AI・クラウドへのニーズなどを尋ねたところ、病院と診療所では、次期電子カルテの選定軸で違いがあることが分かった。

病院はAI重視、診療所は費用・操作性優先

病院と診療所では、次回の電子カルテ更新時に「AI機能の充実度」を重視する割合で大きな差がみられた。

「AI」を重視する割合は、病院では47.8%と約5割に達した。一方、診療所では14.3%にとどまった。病院では、AIが将来への期待にとどまらず、次期電子カルテを比較・評価する具体的な項目になりつつあることがうかがえる。

一方、診療所では、「初期費用・ランニングコストの低さ」が62.3%で最も高く、「導入後・障害発生時のサポート体制の充実度」が42.9%、「操作性・画面の見やすさ」が40.3%と続いた。AI機能の充実度よりも、費用や日常の使いやすさ、安定した運用に直結する条件が優先される傾向がみられた。

もっとも、AIに期待される用途には病院と診療所で共通点もある。紹介状や診断書などの文書作成を支援する機能への期待は高く、医療従事者の記録・文書作成業務を軽減したいというニーズは、施設規模を問わず共通している。

つまり、AIへの関心そのものと、電子カルテを選ぶ際の優先順位は必ずしも一致しない。病院ではAIが選定条件の一つとして存在感を高める一方、診療所では、費用や操作性、サポートといった基本的な導入・運用条件がなお重視されている。

クラウド化、病院の51.3%が「条件次第で検討」

今後の電子カルテのクラウド化について尋ねたところ、病院では「条件次第で検討したい」が51.3%で最も高く、「積極的に進めたい(すでにクラウド型を利用中含む)」は17.7%だった。両者を合わせると69%となり、クラウド化を検討対象とする病院は多い。

一方、診療所では「積極的に進めたい」が36.4%で最も高く、「条件次第で検討したい」の29.9%と合わせると66.3%となった。クラウド化を検討対象とする割合自体は病院と大きく変わらないが、病院では「条件次第」が半数を超えており、より慎重に導入条件を見極めていることがうかがえる。

では、何が導入判断の壁になっているのか。

クラウド化を進める上での不安や課題を尋ねると、病院では「ネットワーク障害やシステム障害発生時に利用できなくなること」が67.3%、「サイバー攻撃や情報漏洩」が66.4%と突出した。「クラウドサービス提供事業者の障害やサービス停止」と「ランニングコストの増加」も、それぞれ41.6%に上った。

診療所でも、「ネットワーク障害やシステム障害発生時に利用できなくなること」が64.9%、「サイバー攻撃や情報漏洩」が55.8%で上位となった。クラウド化への関心は高い一方、病院・診療所ともに、障害時の診療継続とセキュリティーへの不安が大きい。これらをどう担保するかが、導入を検討する上での重要な条件となる。

※複数回答。その他の項目を含む詳細な調査結果はレポート本編に収録
※複数回答。その他の項目を含む詳細な調査結果はレポート本編に収録

選ばれる電子カルテ、病院と診療所で異なる訴求ポイント

今回の調査から、電子カルテに対する関心と、実際の選定時に重視される条件は必ずしも一致しないことが見えてきた。

病院では、AIやクラウドなどの新たな機能・提供形態についても、既存システムとの連携やセキュリティー、診療継続性などを含めて導入条件を検討する必要がある。一方、診療所では、費用や操作性、業務負担の軽減など、日々の診療や経営への効果がより重視される。

ベンダーにとって重要なのは、技術や機能そのものを訴求するだけでなく、それぞれのユーザーが電子カルテを選ぶ際の判断基準に沿って、製品やサービスの価値を示すことだ。
シード・プランニング(東京・文京区)の「2026年版 電子カルテ・PACS市場調査レポート」では、病院・診療所を対象としたアンケート調査について、電子カルテの導入状況、現行システムの課題、更新予定時期、リプレイス時の重視点、AI・クラウドへのニーズ、サポートに対する要望などを詳しく分析している。

さらに、病院向け・診療所向け電子カルテの市場規模予測、普及状況、ベンダーシェア、主要ベンダーへのヒアリング結果、行政動向なども収録した。製品企画、事業戦略、営業・マーケティング施策の検討にぜひ活用していただきたい。

【アンケート調査概要】
調査方法:Webアンケート
調査時期:2026年6月
有効回答:病院119件、診療所102件、計221件
主な調査項目:導入状況、現行システムの課題、更新予定時期、リプレイス時の重視点、AI機能への期待、クラウド化意向・不安、今後強化したい機能、サポートへの要望など

【レポートの詳細・購入はこちら】
2026年版 電子カルテ・PACSの市場動向調査