オンライン診療、勤務形態で利用定着に差 本質的な価値とのギャップをどう埋めるか
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これまでオンライン診療は、制度面の制約や運用上の課題を抱えながら普及してきた。
制度面では、1997年の厚生省通知で対面診療を補完するものと位置付けられたのを皮切りに、2018年には「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定され、コロナ禍の2020年には「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(0410対応)が発出されるなど、制度整備や運用の見直しが進められてきた。
また、導入を巡っては医療関係団体などから慎重な意見も出ていたが、オンライン診療の有用性に関する知見が蓄積するにつれ、医療機関側の受容性も高まってきた。(横山優二・シード・プランニング・シニアリサーチアナリスト)
オンライン診療の本質的な価値は、必要な時に受診しやすいこと
オンライン診療の大きな特長の1つは、医療機関までの移動負担を軽減できることにある。これは単に通院の手間が減るというだけではない。距離の制約を受けにくくなり、利用者が必要な時に受診しやすくなる点に本質的な価値がある。
実際、近年は自治体と連携し、休日夜間の診療体制をオンライン診療で補完する事例も出てきている。2026年4月19日には、埼玉県深谷市で「来所型小児科オンライン診療」が本格的に始まった。これは、日曜日・祝日に深谷市役所本庁舎を受診場所とし、看護師の補助を受けながら協力医療機関の小児科医によるオンライン診療を受ける取り組みだ。
オンライン診療の利用回数・継続意向、勤務形態で差
だが、こうした利点が、すべての利用者に等しく行き渡っていない可能性がある。市場調査会社のシード・プランニング(東京・文京区)は2026年2~4月、オンライン診療利用経験者500人を対象に、利用実態や継続利用意向を調査した。

直近1年以内に1回以上オンライン診療を利用した人に利用回数を尋ねたところ、「1回」が48%で最も多く、「2回~4回」が37%、「5回以上」が15%だった。5回以上の利用は15%にとどまり、繰り返し利用している人は一部だった。

さらに、回答者の勤務形態と利用状況の関係を分析した。
就業中の回答者には、勤務実態について、(1)出社勤務、(2)定時勤務、(3)日勤の多さをそれぞれ5段階で尋ね、集計ではサンプル数を考慮し、各項目の上位2区分(Top2)と下位3区分(Bottom3)に分けた。
その結果、オンライン診療を直近1年間に5回以上利用した人の割合は、(1)出社勤務が多い層が16%で、少ない層の15%をわずかに上回った。(2)定時勤務が多い層は17%で、少ない層の12%を上回り、(3)日勤が多い層も17%で、少ない層の10%を上回った。定時勤務や日勤が多い層で、繰り返し利用する割合が比較的高い傾向がみられた。

この傾向は、継続利用意向にも表れている。継続利用意向の全体では、「利用したい」が34%、「やや利用したい」が38%で、利用意向者は合計72%に達した。

これを勤務形態別にTop2割合でみると、(1)出社勤務層の利用意向は76%で、在宅勤務層の67%を上回った。(2)定時勤務層では78%とシフト勤務層の64%より高く、(3)日勤層でも77%と夜勤層の62%を上回った。出社勤務、定時勤務、日勤が多い各層は、それぞれ少ない層よりも継続利用意向が高い傾向がみられた。
オンライン診療の定着には診療体制と制度の見直しが必要
本来、オンライン診療は、生活リズムが不規則なシフト勤務者や、通常の診療時間帯に医療機関を利用しにくい夜勤者にとって、有効な受診手段となる。ところが今回の調査では、定時勤務や日勤が少ない層で、利用回数や継続利用意向が相対的に低い傾向がみられた。
一因として考えられるのが、医療機関側の診療日・診療時間だ。オンライン診療の仕組みが整っていても、医療機関が診療していなければ利用できない。オンライン診療を導入しても、夜間・休日まで診療時間を広げる医療機関は限られるとみられる。
そのため、利用者が普段のかかりつけ医を受診できず、必要時に対面診療へ切り替えにくい遠方の医療機関を選ばざるを得ない場合もある。
また、利用可能な医療機関が限られれば、診療内容や必要時の対面対応などを踏まえて選ぶ余地も狭まる。こうした選択肢の少なさは、サービスへの安心感や評価に影響する可能性がある。
この状況を改善するには、医療機関がオンライン診療の利用者を想定し、診療日や診療時間を見直す必要がある。ただ、広範な対応を直ちに求めるのは容易ではない。
オンライン診療を対象とする診療報酬は見直されてきたものの、医療機関、特に小規模な診療所が診療体制や業務プロセスを再設計する十分なインセンティブになっているかは検討の余地がある。オンライン診療の普及には、利用者の利便性向上に加え、医療機関が体制を見直すための制度的な後押しも欠かせない。
利用実態から見えた課題と将来像をレポートで分析
オンライン診療には、医療機関への移動負担を減らし、必要なときに受診しやすくする価値がある。一方、今回の調査では、定時勤務や日勤が少ない層で5回以上利用した割合が低く、継続利用意向も低い傾向がみられた。オンライン診療を幅広い働き方の人に定着させるには、医療機関の診療日・診療時間の見直しと、それを支える制度整備が課題となる。

シード・プランニングは、こうした利用実態を含む国内市場の動向をまとめた「2026年版 オンライン診療サービスの現状と将来展望」を2026年4月30日に発刊した。オンライン診療利用経験者500人へのアンケートと、事業者・自治体7団体へのインタビューを基に、自由診療のビジネスモデル、オンライン診療サービス別の利用シェア、2040年までの市場規模予測などを分析している。
レポートの詳細は以下のページで確認できる。
https://store.seedplanning.co.jp/item/12217.html