恵寿総合病院、スマートウオッチ300台を本格運用 バイタルを電子カルテに自動記録
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スマートウオッチの本格運用を発表する神野正博・恵寿総合病院理事長(右から2人目)
恵寿総合病院(石川・七尾市)は10月19日、入院患者が装着するスマートウオッチで血圧や心拍数などのバイタル(生体情報)を測定し、電子カルテに自動で記録するシステムの本格運用を開始したと発表した。300台の端末を導入し、2027年1月中旬に全病棟に運用を広げる。スマートウオッチの活用で看護師の測定・記録業務の負担を減らすとともに、患者の容体急変の兆しを早期に把握することを目指す。

採用したのは、華為技術(ファーウェイ)製のスマートウオッチ「HUAWEI WATCH D2」。ベルトに内蔵したカフ(空気で膨らむ袋)で手首を加圧して血圧を測る仕組みで、血圧計として日本の管理医療機器認証を取得している。同院では、約6日間持続するバッテリーや、家電量販店で購入できる入手のしやすさ、機能の拡張性などを評価した。

「血圧」「心拍数」「SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)」「皮膚温」を測定する。「心拍数」と「SpO2」は装着中に継続して測る。また、「SpO2」と「皮膚温」は参考値として扱う。「血圧」は設定した時刻に自動測定できるが、日中は患者の表情や状態を確認するため、看護師が訪室して一緒に測る。
19日からは睡眠分析機能も導入した。通常は起床後に分析する機能を、睡眠中にも結果を確認できるように変更した。睡眠状況の把握や夜間の血圧測定に活用し、睡眠・覚醒リズムの乱れなどから、せん妄や転倒の兆しに気付く手がかりにもつなげる。

測定データはブルートゥースで病棟のアクセスポイントに送り、院内のバイタル情報サーバーに蓄積し、電子カルテに自動で記録する。データの管理は院内で完結する仕組みを採用しており、同院によると、情報流出の懸念はないという。
電子カルテに自動入力した記録は、入力者欄の「スマートウォッチ」の表示で、看護師が測定・入力した記録と区別する。院内のスタッフステーションの管理画面でもバイタルや端末の電池残量のデータを確認できる。
装着は患者の協力を得て進める。集中治療室の患者や退院間近の患者、装着が負担になる患者などは対象から除く。手首が細くカフで適切に加圧できない場合や、皮膚の状態などから装着が難しい場合も使用しない。まず実証試験を行ってきた病棟で運用し、10月末から対象病棟を順次拡大する。
同院によると、入院患者が装着したスマートウオッチによるバイタルの測定から電子カルテへの記録までを自動化し、実証ではなく本格運用する取り組みは世界初という。2025年6月から実証試験を進め、通信環境や電子カルテとの連携、患者への説明など運用方法の改善を重ねてきた。

神野正博・恵寿総合病院理事長は19日の記者会見で「医療人材がふんだんではない能登の地域だからこそ、生産性を上げる仕組みが必要だ。能登だから東京と同じ医療を受けられないということは避けなければならない。そのためにデジタル化で人手不足を補う」と説明した。
システムはファーウェイ・ジャパン(東京・千代田区)などと構築した。ファーウェイが端末やアクセスポイントの提供、ソフトウエア開発を担い、ソフトウェア・サービスが電子カルテとの連携、YTTテクノロジーが管理システムの開発を行った。

ファーウェイ・ジャパンの張大全・法人ビジネス事業本部公共事業部事業部長は、「多くのパートナーの力を結集し、現場の医療関係者にニーズを教えてもらうことで、この仕組みができ上がった。全国のパートナーと連携し、より多くの医療機関に展開していきたい」と述べた。

恵寿総合病院では、電子カルテに記録されたバイタルなどを基に、患者の容体が急激に悪化するリスクを数値化する「NEWS(早期警告スコア)」を自動算出するシステムを運用している。同院では、スマートウオッチで取得したデータを、このシステムにつなぎ、定時の測定だけでは捉えにくかった状態の変化の把握にも役立てる。
神野理事長は、「スマートウオッチによって、測定の『点』が『線』になることが大きな特長だ。これまでは看護師が患者のところに行った時に血圧や脈などを測っていた。その負担を減らせる。これからは生み出された時間を患者との会話や直接的なケアに振り向けることが重要になる」と話した。
今後は、蓄積したデータのAI(人工知能)による活用や、在宅医療への応用も視野に入れている。
神野理事長は「バイタルだけでなく、医療者が五感で感じた情報や画像、血液検査などのデータを組み合わせて、AIも活用することで、医療の質を高められる。在宅でもデータを送る仕組みを作れば、AIで患者の健康状態を把握し、かかりつけ医に警告を送るなど、大きな可能性がある」と語った。