台湾エキスポ2026、画像診断・膵臓がん検出など医療AIの最新技術を展示 日本展開も視野
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「スマートヘルスケアパビリオン」の会場
台湾貿易センター(東京・千代田区)は、7月15~17日に東京・新宿で企業展示会「台湾エキスポ2026」を開催した。会場に設置した「スマートヘルスケアパビリオン」では、台湾の17の病院・企業が画像診断支援などの最新技術を展示した。
「スマートヘルスケアパビリオン」は「スマート医療」「シニアケア」「予防・健康増進」「健康管理」の4分野で構成。日本と同様に超高齢社会を迎えた台湾の病院や企業が、医療従事者の負担軽減、早期診断、患者安全などの課題に対応するソリューションを展示。中でも「スマート医療」のAI(人工知能)を活用した画像診断支援などに注目が集まった。
CT1回で肺・心臓・骨密度を評価

台北医学大学から技術移転を受けて設立したスタートアップのDeepRad.AI(ディープラッドエーアイ、台北市)は、低線量CT(コンピューター断層撮影装置)画像を解析する「DeepLung-CAC(ディープラング・シーエーシー)」と、MRI画像から認知症リスクを予測する「DeepBrain-Cognito(ディープブレイン・コグニート)」を展示した。

「DeepLung-CAC」は、1回の低線量CT撮影で肺結節、冠動脈石灰化、骨密度異常のリスクを同時に評価する画像診断支援AI。800枚を超えることもあるCT画像から疑わしい肺結節の位置を抽出し、冠動脈石灰化スコアや骨密度の解析結果と合わせてレポート作成を支援する。AIサーバーとソフトウエアを病院内のネットワークに設置するエッジAI方式で使用する。
同社によると、画像の確認からレポート作成までの時間を従来の約25分から約5分に短縮できるという。台湾の35以上の病院で採用されており、臨床利用件数は10万件を超える。2025年には日本の医療機器認証を取得した。
一方、「DeepBrain-Cognito」は、MRI(磁気共鳴画像装置)画像から脳年齢を算出し、大脳皮質の萎縮を定量化する。現在の脳年齢だけでなく、将来の認知機能の変化を予測し、リスクが高い脳領域を可視化できる。診断は医師が行い、AIは読影や判断を支援する形で運用する。
同社は「日本の病院での導入を本格化する」(担当者)考えで、今後はソフトウエアを検証する医療機関と、販売を担う代理店を募る。
睡眠時無呼吸をAIで迅速スクリーニング

臺中栄民総病院(台中市)は、睡眠時無呼吸症候群のリスクを短時間で評価するAIシステムを展示した。首囲、腹囲、血圧、身長、体重、BMIなどの身体情報を入力し、睡眠や自覚症状に関する質問に回答すると、AIが重症度を分析する。

入力から判定までの所要時間は約3~5分。軽症、中等症、重症などのリスクを示し、精密検査の必要性を判断するスクリーニングに利用する。「高リスク」と判定した場合は、睡眠ポリグラフ検査などの追加検査を促すほか、持続陽圧呼吸療法(CPAP)の適正圧を予測する。病院によると、従来は2カ月~1年かかることもあった検査・診断のプロセスを約1週間に短縮できるという。


ブースでは、医療AI企業のIntelliGen Technology(インテリジェン・テクノロジー、台北市)と連携した医用画像の3D化技術「Anatomy Cloud(アナトミークラウド)」も紹介した。AIでCTやMRI画像を臓器や組織ごとに分割し、5分以内に3Dモデルを生成する。患者への治療説明のほか、複合現実(MR)を使った手術ナビゲーションや医学生の教育に活用できるという。
2cm未満の膵臓がんをAIで検出

輔仁大学附属病院(新北市)は、PanCAD.ai(パンキャド・エーアイ、台北市)が開発したAI膵臓(すいぞう)がん検出支援システム「PANCREASaver(パンクレアセーバー)」を展示した。台湾大学病院で研究・開発した技術を基にパンキャド・エーアイが製品化し、輔仁大学附属病院が健診で導入している。
「PANCREASaver」は、腹部CT画像をAIで自動解析し、膵臓がんが疑われる病変の位置を数分で表示する。同社によると、2cm未満の腫瘍に対する感度は約90%という。輔仁大学附属病院によると、膵臓は腹腔の奥にあり、早期の腫瘍は画像上の特徴が乏しく、2cm未満の病変は判別が難しいと説明している。

AIの学習には台湾の病院が持つ膵臓がんのCT画像を使用した。2024年までに病変領域を示すアノテーションを付けた4000枚以上の画像を学習させた。現在も運用を通じてデータの追加とアルゴリズムの更新を続けているという。
輔仁大学附属病院は聖路加健康管理センターでシステムを導入。腹部CT撮影後にAIで解析し、放射線科医が約10営業日で報告書を作成する検査フローを整備した。
パンキャド・エーアイは、台湾と米国で計4件の特許を保有する。台湾衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)の医療機器承認を取得しているほか、米食品医薬品局(FDA)のブレークスルーデバイス指定も受けている。
同社は今後、米国での承認取得の手続きを進め、その後、日本での薬事承認取得を目指す。今回の出展を通じ、日本の販売代理店や医療機器企業、臨床面で連携する医療機関を募集する。
スマートロッカーで薬剤を受け渡し

中山医学大学発(台中市)のスタートアップで、医療物流の自動化システムなどを手掛けるCloudiCube Technology(クラウディキューブ・テクノロジー、同)は、同大学附設医院と開発した薬剤業務管理システム「スマート薬剤クラウドキューブ」を動画で紹介した。

「スマート薬剤クラウドキューブ」は電子ロック付きキャビネットと薬剤搬送管理システムを組み合わせ、薬剤師から院内搬送担当者への受け渡しを記録・管理するシステム。薬剤師が調剤と確認を終えた薬をキャビネットの背面から病棟別の区画に投入すると、搬送業務の指示が専用アプリを通じて担当者へ送られる。

担当者は職員証で認証し、スマートフォンに表示されたQRコードを読み取る。届け先の病棟に対応する扉が開き、ランプが受け取る区画を示す。2人が同時に作業する場合はランプの色を分け、緊急薬は赤色で知らせる。受取時に薬剤を1件ずつスキャンするため、誰が何時に受領(じゅりょう)し、どの病棟へ運んだかを追跡できる。
院内の搬送依頼は配車・派遣センターに集約し、薬局に近い担当者へ割り当てる。薬局内へ搬送担当者が立ち入らずに薬を受け取れるため、調剤エリアの動線を分離できる。蓄積したデータから病棟ごとの処方件数や緊急薬の発生状況も分析する。台湾では規制薬物や手術室の医療材料の管理にも活用されている。
中山医学大学附設医院は病床数が1140床で、入院患者向けの処方は1日約3000件に上り、30病棟への薬剤搬送が発生する。同院の担当者は「システムで薬の誤配がなくなり、業務効率化にもつながった」と強調した。クラウディキューブでは今後、日本の医療機器企業などとの連携を検討している。
看護業務を支援する配送ロボット

台湾基督長老教会馬偕医療財団法人馬偕記念病院(台北市)は、医療現場でのAI活用事例として、配送ロボット「AIスマート看護車」などを紹介した。
「AIスマート看護車」は、国立台湾師範大学と共同開発した。エヌビディアの小型AIコンピューター「Jetson Orin(ジェットソン・オーリン)」を基盤に、機械視覚、音声認識、自律走行、操作画面を統合したロボット。看護師がタッチパネルで看護ステーションや病床などの出発地と目的地を設定すると、内蔵地図に沿って自律走行する。
導入時は「追従モード」で看護師が指定ルートを一度案内すれば、システムが経路を記憶する。走行中は周囲の障害物を検知して停止する。巡回中の観察記録を音声で入力し、自動で文字化・保存するアプリも開発している。ブースでは実機を展示せず、担当者が「AIスマート看護車」について説明した。
超高齢社会の日本で医療機関・企業との連携を模索
今回紹介した技術は、病院が抱える課題を起点に、医療従事者と大学、スタートアップ、IT企業などが共同開発したものが多い。画像診断支援AIや薬剤搬送システムを手掛ける出展者は、日本で検証に協力する病院や販売代理店、医療機器企業との連携を模索している。
台湾の人口は2329万9132人(2025年12月末時点)で、65歳以上が約20%を占め、同国が定義する超高齢社会(65歳以上が総人口の20%以上)に突入した。台湾貿易センターによると、台湾では高齢化に伴う人材不足など、医療現場の課題をITとAIの活用で解決する取り組みを進めている。こうした取り組みは少子高齢化が進む日本でも活用できるとして、スマートヘスルケアのパビリオンを設置したという。
センターは今後、台湾企業の技術開発力と日本の医療・介護現場のニーズを組み合わせた協業を後押しする。日本での普及には、薬事承認や国内データによる検証、既存の病院情報システムとの連携などが課題となる。
「台湾エキスポ」は、台湾経済部国際貿易署が主催し、台湾貿易センターが実施した。日本での開催は2023年に続き2回目。「Innovate for Tomorrow」を掲げ、「AIスマート製造」「エネルギー・循環」「スマートシティ」「スマートヘルスケア」「FOOD・LIFESTYLE」の5テーマで8つのパビリオンを設けた。台湾企業154社が出展し、3日間で2万2616人が来場した。出展企業へのビジネス効果は1億5641万米ドルを見込む。