メドレー、医療機関と患者をつなぐ「ひとつながりの医療プラットフォーム」へ

診療記録を管理するシステムとしての電子カルテの役割は、大きな転換期を迎えつつある。医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や生成AI(人工知能)の進化、医療情報の標準化などを背景に、電子カルテにはAIの活用や外部サービスとの連携など、これまで以上に幅広い役割が求められるようになってきた。

こうした中、メドレーは、医療機関ごとに診療支援システムを提供するだけではなく、患者と医療機関をつなぐ「医療プラットフォーム」に進化させる構想を描いている。

診療所向けクラウド診療支援システム「CLINICS (クリニクス)」、病院向け電子カルテ「MALL(モール)」、クラウド歯科業務支援システム「DENTIS(デンティス)」、薬局向け統合型クラウドソリューション「MEDIXS(メディクス)」、それらを束ねた「MEDLEY AI CLOUD(メドレー・エーアイ・クラウド)」を通じて、同社が描く医療プラットフォームの未来像と、その実現に向けた取り組みについて聞いた。(医療テックニュース編集部 編集長 米谷知子)

電子カルテは「医療情報の社会インフラ」へ

メドレーは現在の市場について、「診療所では紙カルテやオンプレミス型電子カルテからクラウド型への移行が加速している」と分析する。一方で、医療機関が電子カルテに求める役割も、「従来の業務効率化だけではなく、患者体験(Patient Experience)の向上へと広がっている」という。

生成AIの普及により電子カルテへのAI機能搭載が進み、電子カルテ情報共有サービスや医療情報標準化への対応が進展することで、電子カルテは「施設内で利用するシステム」から「医療情報の社会インフラ」へと役割を広げていくとみる。

「患者とつながる」クラウド診療支援システム「CLINICS」

こうした考え方を体現するのが、診療所向けクラウド診療支援システム「CLINICS」だ。

CLINICSは「患者とつながる」をコンセプトに掲げ、電子カルテ、レセコン(レセプトコンピューター)、予約、問診、オンライン診療、会計、経営分析、AI機能までをオールインワンで提供する。「予約・問診・診察・会計」がシームレスにつながることで、医療従事者が複数のシステムを並行して使うことがなくなり業務効率化と患者の利便性向上を図っている。

2026年3月末時点で約3500施設が導入する。新規開業だけではなく、既存システムからのリプレイス需要も増えており、クラウド型電子カルテへの普及を背景に導入が進んでいる。

同社によると、「クラウド化への不安は以前に比べて大きく低下し、現在は既存システムからの入れ替えの際もクラウドを前提とした製品選定が進みつつある」という。クラウドによってAIや外部サービスとの連携が容易になり、複数拠点でのリアルタイムな情報共有など、医療現場の業務改革がさらに進むとみている。

クラウド診療支援システム「CLINICS」(提供:メドレー)
クラウド診療支援システム「CLINICS」(メドレーの許諾を得て転載)

AIが診療記録や文書作成を支援

生成AIの活用も、同社が注力する分野の1つだ。CLINICSではAIアシスト機能として「AI要約機能」を提供し、「AI文書作成」の開発も進めている。

診察中の医師と患者の会話をリアルタイムで文字起こしを行い、AIがSOAP(主観、客観、評価、計画)形式で診療記録を自動要約する。患者情報や検査結果、過去の診療録などをもとに、療養計画書や主治医意見書などの医療文書作成も支援する。医師やスタッフの入力負担を軽減し、診療や患者との対話により多くの時間を充てられる環境づくりに役立つという。

今後はカルテ記載や医療文書作成などの記録業務の多くがAIによってサポートできる余地があるとみており、AI活用は今後の電子カルテ市場で重要な競争軸になると考えている。

診療所と病院、それぞれに最適化した電子カルテを展開

メドレーは診療所向けの「CLINICS」に加え、病院向け電子カルテ「MALL」も展開する。MALLは高い柔軟性と拡張性を特長にする。一般病院向けだけではなく、精神科病院向け「MALL精神科」、重症心身障害児施設向け「MALL重心」、透析施設向け「MALL透析」など、専門領域ごとのニーズに対応したラインアップを用意する。また、診療所と病院では必要な機能や導入プロセスが大きく異なることから、それぞれに最適化した製品開発とサポートを進めている。

電子カルテを核に「MEDLEY AI CLOUD」で医療全体をつなぐ

メドレーでは現在、医療プラットフォームとして提供しているプロダクトを束ねて、医療機関が患者・生活者とつながる次世代医療プラットフォーム「MEDLEY AI CLOUD」として展開している。

これは医科、歯科、薬局、患者向けサービスを横断的につなぐブランドで、「より良い患者体験」「AI活用」「安心・安全」「オープン連携」「リーズナブル」の5つをブランドプロミスに掲げる。プラットフォームを通じて、医療従事者が診療や患者との対話に集中できる環境づくりを推進する。

同社は、電子カルテを医療情報の集約基盤とし、AIや各種医療サービスとの連携を進めることで、医療機関だけでなく患者も含めた新たな医療体験の提供を目指している。

「MEDLEY AI CLOUD」では「オープン連携」を重要な方針に掲げ、自社開発だけでなく、標準化対応やAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)などを通じた他社システムとの連携も積極的に推進する。

次世代医療プラットフォーム「MEDLEY AI CLOUD」の全体像(提供:メドレー)
次世代医療プラットフォーム「MEDLEY AI CLOUD」の全体像(メドレーの許諾を得て転載)

2030年に向けて、電子カルテは社会全体を支える医療プラットフォームへ

同社は2030年頃には電子カルテ情報共有サービスの全国展開やPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の普及が進み、電子カルテは医療機関単位のシステムから、社会全体で医療情報を支えるプラットフォームに進化すると予測する。

競争軸も、「従来の機能や価格だけではなく、AIによる付加価値や患者体験の拡張、さらには周辺サービスを含めたエコシステム全体で価値を提供できるかという点に移っていく」という。

その実現に向け、患者用スマートフォンアプリ「melmo(メルモ)」も活用していく。melmoは、予約、問診、受付、オンライン診療、決済などをシームレスに利用でき、通院前から通院後まで患者と医療機関をつなぐ。

電子カルテだけではなく患者接点の仕組みも一体で提供することで、診療所、病院、歯科、薬局をつなぐ医療プラットフォームを構築し、医療従事者がより診療や患者との対話に集中できる環境と、患者が納得して医療を選択できる社会を実現したい考えだ。