【2024年版】電子カルテ導入に補助金は使える? 注意点も解説
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政府は2030年までに、すべての医療機関で電子カルテを導入することを目標としている。さらに、2025年4月より「電子カルテ情報共有サービス」を開始することから、医療機関は本サービスに接続するため、電子カルテシステムを標準規格に対応する機能を導入するよう求められている。
しかし、導入には高額のシステム改修費が必要となり、費用負担が大きくのしかかる。そこで政府は各種補助金を用意し、医療機関の負担軽減につなげていく予定だ。主なものは、厚生労働省が実施する「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」と経済産業省・中小企業庁が実施する「IT導入補助金」がある。それぞれの補助金の概要をまとめた。(医療テックニュース編集部 久田有里子)
「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」とは
厚生労働省は、20床以上の病院向けに、2024年3月より「医療機関等向け総合ポータルサイト」で、「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」の交付を開始している。申請締め切りは2031年9月30日だが、2031年3月31日までに電子カルテ情報共有サービスの導入を完了した上で補助金の申請をする必要がある。
補助金の対象となるのは、電子カルテ情報共有サービスに接続するために必要となる、電子カルテ情報・文書を「HL7 FHIR」に基づいた形式に変換し、電子的に送受信するために必要な改修などにかかる費用。
具体的には、システム改修・標準規格変換機能整備費用、システム適用作業などの費用が対象となる。健診を実施している医療機関の場合、健康診断部門システムと電子カルテシステム連携費用も補助の対象となる。病院の規模・健診部門システムの導入の有無によって補助の上限額が異なる(下記表を参照)。
新規で電子カルテを導入した場合、実施要領に記載のある、電子カルテ情報標準規格準拠対応機能以外の機能の導入費用は補助金の対象外となるため、注意が必要だ。また、病院で電子カルテのカスタマイズを行っている場合、改修費用が補助金の上限を超える可能性があるが、超過分は補助金の対象とならない。「医療機関等向け総合ポータルサイト」で申請できる。
電子カルテ導入の診療所も対象の「IT導入補助金」とは
経済産業省・中小企業庁は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的として、「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」を交付している。中小企業や小規模事業者が業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)のために、ITツールやシステムを導入する際に申請できる。診療所向け電子カルテの導入も本補助金の対象となり、医療機関の場合、常勤300名以下の医療法人、従業員20人以下の個人事業主が申請できる。
2017年から毎年公募が行われており、例年春(2~5月)に申請受付を開始している。2024年度は2024年2月16日に申請受付を開始、交付申請期限は8月23日(金)17時まで。2024年中にもう一度公募を実施する予定となっている。「IT導入補助金2024」には、以下5つの枠組みが設置されている。
電子カルテ導入の場合は「通常枠」を利用する場合が多く、補助率は2分の1以内。補助額は業務プロセスが、1以上で5万円以上150万円未満、業務プロセスは、4以上で150万円以上450万円以下。ソフトウエア購入費だけではなく、クラウドサービス利用料や相談対応等のサポート費用も含まれる(詳細は以下参照)。
●ソフトウエア購入費、クラウド利用料(最大2年分)
●機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ
●導入コンサルティング・導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート
「通常枠」でハードウエアは補助の対象外となるため、電子カルテ導入に必要なPCやタブレット端末は実費での用意となることは注意が必要だ。
また、事務局に登録されたITツールのみ利用可能であるため、事前の確認が必要。利用したい電子カルテが事務局に登録されていること、提供するベンダーが「IT導入支援事業者」に認定されていることを確認する必要がある。「IT導入支援事業者」とは、中小企業がITツールを導入する際に、導入や運営のサポートを行う事業者を指す。「IT導入補助金2024」ウェブサイトから詳細内容を確認・申請できる。
自院の課題解決に適切なシステム導入では時期の慎重な検討を
政府は2030年までにほぼすべての医療機関で電子カルテを導入するという目標を掲げている。厚生労働省が病院向けに交付している「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」の申請締め切りも2031年であることから、医療機関は向こう5年程で、医療DXを進めることが求められている。
しかし、2024年8月現在、厚生労働省が推奨する標準規格に対応しているメーカーは限定的である。そのため、導入時期は慎重な検討が必要である。自院の課題解決に使える適切なシステムを導入するため、今後の国の方針やメーカーの動向に注視する必要があるだろう。