TIS、東和薬品と、東邦大佐倉病院に抗がん剤治療患者向けでPHR基盤サービス導入
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TISは2月18日、東和薬品と、東邦大学医療センター佐倉病院(千葉・佐倉市)に、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)基盤サービス「ヘルスケアパスポート」を導入したと発表した。
「ヘルスケアパスポート」は、患者や生活者の健康・医療情報を医療従事者や家族と共有できるPHRサービス。患者や生活者の情報共有の意思表示(オプトイン)に従い、健康や医療情報を安全に双方向で共有できる仕組みをサービス利用型で提供する。
東邦大学医療センター佐倉病院は、抗がん剤治療患者向けに1月から導入した。「ヘルスケアパスポート」で、患者が無理なく副作用症状を報告できるようにすることで、薬剤師が自宅療養期間中の患者の服薬状況や体調変化を把握し、寄り添ったケアの実施が可能になったという。
同院では、導入に先駆け、2022年後半から、門前薬局の専門医療機関連携薬局のあやめ薬局下志津店と、約1年をかけて症状報告画面のカスタマイズと技術検証を実施。具体的には、抗がん剤による副作用症状で、重症度別に入力可能な12項目をカスタマイズで追加し、5段階から選択し記録できる「体調」の項目や、どれにも該当しない症状をフリーフォーマットで記録できる「気づいたこと」の項目も追加し、患者が簡単に詳しく状況を報告できるようにした。
また、カスタマイズの作業と並行し、「ヘルスケアパスポート」の「施設間連携メモ」機能を利用し、共通基盤の中で情報を共有するテストも実施。テストでは、病院薬剤師と薬局薬剤師が、患者が報告した同じデータを見ながらチャットで初期対応の相談などができること、薬局から病院に提出する副作用状況報告書(トレーシングレポート)のPDFが安全性を確保し送信できることを確かめた。
現在は50人程度が利用する。患者からは、「入力が簡単だから続けやすい」という声や、つらい副作用症状を報告した時に薬局から電話やメッセージで助言を行ったり、病院への受診を促したりすることで、「安心して治療に臨めた」「治療に役立った」という声が寄せられているという。
佐倉病院では「病院薬剤師と薬局薬剤師の距離が縮まり、薬薬連携がよりスムーズになったと感じている。患者が『ヘルスケアパスポート』で報告するようになって約10カ月、適切な服薬マネジメントに役立っており、自宅で服用する副作用対策の薬をうまく活用できず抗がん剤の量を減らしたり、治療を中断したりするといったケースは起きていない」(薬剤部の平井成和氏)と話している。
TISと東和薬品は、「ヘルスケアパスポート」の協業販売に向けたアライアンス契約を、2021年に締結。TISがヘルスケアデータを適切に一元化・共有するシステムの開発と運営、東和薬品は幅広い販売網を活用したサービスの提供を担当し、サービスの普及を進めている。