熊本中央病院、ispecのAI基盤「Sail AI」を10部署で活用 1病棟の時間外労働を約7割削減

熊本中央病院(熊本市)

医療基幹システムのクラウド化などを手掛けるispec(イスペック、東京・品川区)は10月30日、熊本中央病院(熊本市)が、病院向けAI(人工知能)基盤「Sail AI(セイルエーアイ)」の活用を10部署に広げたと発表した。2026年9月には職員229人が利用し、AIによる業務の実行回数は月間約6300回に達した。

「Sail AI」は、スマートフォンなどを使って、音声でカルテの下書きやメモを記録し、音声入力された内容をAIが自動で整理し、SOAP(主観、客観、評価、計画)形式などの医療記録・カルテ用データに変換するシステム。

音声入力は移動中や患者の処置中でも行える。患者ごとの記録は時系列で確認が可能。画像読み取りのほか、チャットで記録・書類の形式を設定し、AIに下書き作成を任せる「AI業務」を作る機能も備える。

「Sail AI」の利用職員数と業務実行回数、活用されているAI業務の推移
「Sail AI」の利用職員数と業務実行回数、活用されているAI業務の推移

熊本中央病院では、看護記録の音声入力から利用を開始した。その後、医師や薬剤科、リハビリテーション科、地域医療連携室、事務部門などに拡大。月間の実行回数は3月から半年で約9倍となった。9月の職員1人当たりの利用回数は約27回で、10月には、実際に使われているAI業務が300件を超えた。

熊本中央病院の各部門で使われている「AI業務」の例
熊本中央病院の各部門で使われている「AI業務」の例

看護部門では、患者の状態を時系列で記録する経時記録や看護サマリー、退院サマリーの下書き、多職種カンファレンスの記録などに活用する。医師は診療情報提供書(紹介状)や外来返書などの作成に、医師事務作業補助者は紹介状の要約などに利用している。

地域医療連携室では退院支援面談の記録や転院調整のサマリー、リハビリテーション部門では診療記録、栄養科では栄養指導記録などの作成に使用している。

イスペックによると、60床ある1病棟では、ベッドサイドで話した内容をその場で記録し、勤務時間内に記録作業を進められるようになったことなどで、時間外労働が約70%減少した。地域医療連携室でも相談記録の自動化などにより約30%の削減につながった。

熊本中央病院の鳥飼達也・事務部長は「現場の職員が自分たちの業務に合わせて使い方を広げていることが、一番の成果だ」と話している。

イスペックでは、導入支援の一環で、院内でAI活用を進める「AI推進チーム」の結成を支援しており、ワークショップなどを通じて利用の定着を後押しする。