ジールス、桜十字の介護施設でヒューマノイド「D1」の実証 配茶・運搬など検証
掲載日:
介護施設内を移動するヒューマノイドロボット「D1」
AI(人工知能)スタートアップのZEALS(ジールス、東京・目黒区)は9月10~11日、桜十字グループの介護付有料老人ホーム「ホスピタルメント文京千駄木」(東京・文京区)で、ヒューマノイド(人型ロボット)「D1」を使った実証実験を実施した。施設内での自律走行、紙おむつなどの軽量物の運搬、ポットを使った配茶の3つの業務を検証した。実証最終日の11日には報道関係者向けに実験の様子を公開した。

「D1」は、日本の病院や介護施設などの屋内環境で人と共存し業務を行うことを目的に開発したヒューマノイドロボット。2本のアームを持ち、片腕当たり最大5kgの物を持ち上げる。アームの全軸にはトルクセンサーを搭載し、人や物体との接触を検知した場合に動作を停止する。二足歩行ではなく台車型にして転倒のリスクを防ぐ。対話や案内に加え、双腕を使った物品準備、配膳補助、運搬などへの活用を想定する。全高約129.3cm、走行ベースの幅は約48cmで、最大約8時間稼働する。

今回の実証では、施設内の指定した場所まで自律走行する移動タスク、紙おむつなどの軽量物を指定場所まで運んで受け渡す軽量運搬タスク、ポットをつかんで持ち上げ、コップにお茶を注ぐ配茶タスクを行った。
配茶タスクでは、ポットの把持、持ち上げ、コップに注ぐまでの一連の動作を検証した。1日目は13回中11回成功した。2日目の11日は部分的に成功したものの、動作の安定性や再現性には課題も見られた。ジールスでは、実際の介護施設で得たデータを今後の動作精度の向上に生かす。

菅谷真・桜十字グループ医療介護ウェルケア事業本部ホスピタルメント事業部運営部長は、実証実験に協力した理由について「介護職員の人手不足や体への負担がある。ロボットによって、まずは荷物を持って行く、案内するといった補助的な仕事での負荷軽減が期待できる。ゆくゆくは利用者を支えたり抱えたりする業務などでも活用したい」と説明した。
実証前には、入居者がロボットに驚くことなども懸念していたが、2日間の実証では「D1」が入居者から人気を集めたという。菅谷運営部長は「入居者がロボットを受け入れてくれたのはすごく大きなことだ。本当に職員の一員として、今後活躍してもらえるのではないか」と期待感を示した。
ジールスでは今回の実証に先立ち、8月26~28日に重工大須病院(名古屋市)でも「D1」の実証実験を実施した。2台を3日間で延べ35時間稼働させ、来院者案内、軽量物運搬、配茶、下膳、体操進行の5業務を検証した。人との接触と「D1」の転倒はゼロだったという。

清水正大・ジールス代表取締役は、医療・介護施設で実証を行う理由について「医療・介護の現場は人手不足が本当に深刻で、構造的な人手不足や経営の難しさに対して、きちんと本質的なソリューションが必要だ。ロボットはその解決策になる。実際、『このロボットを活用できないか』という問い合わせも多い」と説明した。
「D1」の強みについては「障害物を避けながら自らルートをつくる自律走行などの安全性とコントローラーを使わず会話で操作できる親しみやすさ、500万円からの価格」と話した。
現時点では、ロボットの自律移動を使った案内、運搬、見回りなどを優先し、今後は配茶や下膳など双腕を使う作業を増やす。清水代表は「バク転はできなくても、お茶を入れてくれるロボットの方が現場では役に立つ」と語った。人の負担を減らす日常的な仕事を担えるロボットの開発を進める。
今回の実証では、研究・開発環境では正常に動いていた機能が、実際の施設では想定通りに動かないケースも確認された。清水代表は「ラボではうまくいっていたことが、現場で全然うまくいかないことが実際に起こった。そこで得られる学びとデータを生かして、ロボット開発をしていくことが一番大切」と強調した。
今後は実際の現場から収集したデータを基にAIモデルを改良するとともに、中長期的に国内での部品供給網の構築を進める。医療・介護を皮切りに製造、物流、ホテルなどにも展開する計画で、2026年度内に100台を量産し、累計1万時間の現場稼働を目指す。