院内データ活用し分析や効率化、病院経営システムに脚光

システムでは診療科別の売り上げなどを把握できる(写真はエム・イーの「HAMIS」)

厚生労働省の「病院報告」によれば、2022年の国内の病床利用率は前年比で0.8ポイント減の75.3%となり、病院経営で損益分岐点とされる80%を下回る状況が続いている。さらに人手不足も進んでいることから、病院を効率的に運用するための新しい技術の需要が高まりつつある。

こうした中、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催された医療などの機器やシステム、サービスを扱う専門展「国際モダンホスピタルショウ2024」でも、病院の経営を支援するシステムが目を引いた。

病院内のデータを集約し経営改善に役立てるDWH

医用工学研究所のブース
医用工学研究所のブース

KDDIグループの医用工学研究所は,医療機関向けのデータウエアハウス(DWH)の「CLISTA!(クリスタ)」を出展した。

「CLISTA!」は、病院内にあるデータを可視化することで、経営改善や業務効率化に役立てるシステム。電子カルテや医事会計システム、そのほかの部門システムなどのデータを集約して分析できる。対象データに条件設定することで必要な情報だけを検索して表示することが可能。集計や統計も自動で行える。

「CLISTA!」の集計結果画面
「CLISTA!」の集計結果画面

集計などの結果は、グラフで示すことで、問題点などを把握しやすいようにした。また、作成したグラフデータなどの集計情報は、院内ポータルで共有し、病院スタッフがブラウザーを使って見ることができる。「自動化と使いやすいインターフェースで、必要なデーを毎日、すぐに把握して経営に役立てられる」(医用工学研究所)という。

キャッシュフローや生産性データから“経営黒字化”を支援

エム・イーのブース
エム・イーのブース

DXコンサルティング事業などを展開するエム・イー(長野・長野市)は、病院高度経営情報システム「HAMIS(ハミス)」を展示した。

「HAMIS」は、電子カルテを始めとする診療や看護、検査などの医療情報、会計、一般業務などの経営情報の管理に加え、地域医療連携までを一体化したシステム。総合システム構造を採用しており、病院全体のシステムデータを通じた経営管理や、待ち時間短縮などの患者対応の業務プロセス改善などの機能を備える。医療システム手掛けるエスパイオン・メディカルテクノロジー(千葉・銚子市)と開発した。

キャッシュフローのデモ画面
キャッシュフローのデモ画面

目玉となるのが、財務構造機能と、業務活動管理体制機能だ。財務構造機能では、収入、支出のキャッシュフローを表示機能を備える。また、「内科」「外科」といった診療科目ごとの売り上げを表示することも可能。これらのたデータを活用することで、病院の経営状況を分析し、改善に役立てることができる。

業務管理のデモ画面
業務管理のデモ画面

業務活動管理体制機能では、病院スタッフの勤務人数や業務量を表示。部門の生産率を計算して表示。こうしたデータから、スタッフの勤務状態や業務量などを把握し、最適な人員配置を行うことで、生産性向上につなげることができる。

共同開発したエスパイオン・メディカルテクノロジー担当者は「病院の7割が赤字経営といわれており、病院の経営状態が悪化すれば、医療従事者の確保や医療設備などの維持や投資が困難になり、医療機関が閉鎖する恐れもある。そこで、われわれは、病院の黒字経営を支援するためのシステムを開発した」と説明する。

病院は、診療報酬の改定や施設の老朽化などによる建て替えの投資負担などで、今後は経営がますます厳しくなるとみられている。また、人口減少を背景に経営効率化や働き方改革を求める動きも強まっている。そのため、病院にも一般企業と同じ経営マインドが求められくる。こうした背景から、病院経営を支援する情報システムのニーズは今後、高まることが予想される。