小児希少疾患・難病患者支援の未来を切り拓く
佐谷秀行・健やか親子支援協会理事に聞く
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佐谷秀行・藤田医科大学腫瘍医学研究センター長、健やか親子支援協会理事
通信技術の進化に伴い、医療分野での情報活用が進む中、健やか親子支援協会(東京・渋谷区)が「小児希少難病の精査診療機関検索サイト」を立ち上げた。このサイトは、患者や主治医と専門医をつなぐ画期的なツールとして注目されている。協会の理事を務める、藤田医科大学腫瘍医学研究センター長の佐谷秀行氏に、サイト開発の背景や意義、今後の展望について聞いた。(聞き手:相澤弥生・シード・プランニング・リサーチアナリスト)
小児希少疾患・難病の情報や専門医不足の解決を目指しサイト開設
――サイトを立ち上げたきっかけを教えてください。
佐谷:小児希少疾患・難病には、患者数の少なさ、情報不足、専門医不足という課題があります。その結果、診断までに時間がかかり、適切な医療にたどり着けない患者が少なくありません。この問題を解決するため、かかりつけ医が専門医につながれる仕組みを作る必要性を強く感じました。
――具体的に、どのような方法で課題にアプローチされたのですか。
佐谷:私が関わる「レックリングハウゼン病学会」で、患者さんが専門医の情報にアクセスできるウェブサイトを構築していました。この経験を基に、健やか親子支援協会では、より多くの小児希少疾患や難病に対応する包括的なサイトとして立ち上げました。
――サイトはどのように活用されることを目指していますか。
佐谷:主な対象は、かかりつけ医やホームドクターの先生です。サイトは、患者の症状や疾患に応じて、最適な専門医がいる医療機関を検索するサポートツールとして設計されています。例えば、外見的な症状を基準に検索したり、疾患名から検索したりと、利用者のニーズに応じた柔軟な仕組みを提供しています。患者や家族が、情報を確認し、かかりつけ医に相談するといった形での利用も想定しています。
――サイトに掲載される情報はどのように収集されているのでしょうか。
佐谷:疾患の専門医や関連学会、患者会のみなさん、ボランティアの方々との協力を通じて情報を収集しています。情報は定期的に更新し、医師の異動や公的医療保険制度の変更にも対応しています。
――これまでに利用者からの感想やフィードバックはありましたか。
佐谷:私は直接フィードバックをいただく機会は少ないのですが、協会に「このサイトのおかげで診断がスムーズに進んだ」といった家族からの感謝の声が寄せられていると聞いています。また、「もっと早くこのサイトを知っていれば、適切な治療を受けるのが早かったかもしれない」という意見もあり、ツールの必要性を改めて感じています。
サイトの認知度を上げ、自治体・企業と連携し社会の認識を高める
――今後の課題や目指す方向性を教えてください。
佐谷:課題としては、サイトの認知度向上や情報量のさらなる充実があります。また、自治体や企業などとも連携し、希少疾患や難病に対する社会的認識を高めたいと考えています。このサイトが、患者や家族の生きづらさを和らげ、より生きやすい環境を作る一助となることを目指しています。
――読者に希少疾患や難病について、特に知っておいてほしいことはありますか。
佐谷:簡単にいうと、メジャーな病気だけが疾患ではないということです。私自身、特にがんの研究に携わってきましたが、メジャーな病気ばかりを見てきた者が希少疾患や難病に触れた時、これだけ医学が発達しているにもかかわらず、対応が行き届いていない現実に気づきました。
協会のメンバーは、「誰一人取り残さない」という理念のもとで、力を合わせて活動に取り組んでいます。ぜひ、このサイトをご覧になっていただき、「希少疾患・難病」という分野について理解を深めていただければと思います。