CureAppの減酒治療補助アプリ「HAUDY」を沢井製薬が販売開始、国内初の保険適用

(左から)「減酒治療補助アプリ「HAUDY」上市に関する記者会見」に出席した宋龍平・CureApp飲酒量低減治療補助アプリプロジェクトリーダー、佐竹晃太・CureApp社長、木村元彦・沢井製薬社長、澤田豊博・沢井製薬上席執行役員製品戦略部長

医療アプリ開発のCureApp(キュア・アップ、東京・中央区)は8月27日、薬事承認と保険適用を取得したアルコール依存症の患者向け減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」を沢井製薬が9月1日から販売を開始すると発表した。

減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」
減酒治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」

「HAUDY」は、医師が診断し、患者に処方されるスマートフォンアプリを使ったプログラム医療機器(SaMD)。アルコール依存症の初期治療の減酒を補助する。医療機関が発行する処方のQRコードを読み取り、ダウンロードして利用する。

患者は日々の飲酒をアプリに記録する
患者は日々の飲酒をアプリに記録する

アプリは患者用と医師用で構成。患者はスマホのアプリに、飲んだ酒の種類や量、体調などの項目を毎日入力すると、その情報から減らす酒の量や、セルフケアなど取り組むべき対策のコンテンツ利用を提案する。プッシュ通知で日々の入力を促すなど、患者が継続して利用できるよう工夫した。

アプリが医師の診察室での心理社会的治療を補助する
アプリが医師の診察室での心理社会的治療を補助する

一方、医師はアプリを通じて、記録された患者のデータや、コンテンツを確認できる。定期的な診察時には、データを基に患者の行動を振り返りながら、目標の見直しなどの指導に役立てる。指導はスライドを使うことで患者に分かりやすいようにした。

診察間の治療の空白をアプリがサポートする
診察間の治療の空白をアプリがサポートする

これまでの治療では医師が患者の状態を把握できるのは診察時のみだったが、アプリでは日々の記録が蓄積され確認できるため、診察間の治療の空白を埋めることが可能になる。また、事前に患者のデータを確認できることで、医師は限られた診察時間内でも診療の質向上が図れるという。

さらに、減酒治療が専門でない医師でもアプリを活用することで飲酒量の目標設定や確認、改善の評価を通じて患者を精神的な面から支援する心理社会的治療の補助が可能なため、より効果的な治療が期待できるとしている。

CureAppが行った治験では約300人を対象に「HAUDY」を使うグループと使わないグループに分け、1日のアルコール摂取量が男性が60g、女性は40gを超える日を12週間で比べた。その結果、4週間あたりの日数を算出したところ、「HAUDY」を使ったグループは12.237日、使わなかったグループは9.453日に減少。アプリが3日ほど減少したことが有意差で認められ、アルコール依存症の治療補助アプリで初めて薬事承認につながった。

アプリは医師が診断して処方する。処方は日本人肝臓学会などが作成したアルコール依存症の診断と治療の研修を修了した医師が行える。公的健康保険が適用され、患者は負担3割の場合、月額約2500円で利用できる。

一方、医療機関は、「特定保険医療材料アルコール依存症飲酒量低減治療補助アプリ」(初月から6カ月)が7010円、「プログラム医療機器等指導管理料(同)」で900円(保険点数:90点)、「導入期加算(初月のみ)」で500円(同:50点)として保険請求が行える。

佐竹晃太・CureApp社長
佐竹晃太・CureApp社長

佐竹晃太・CureApp社長は、27日に開催した発売会見で「減酒治療の領域は未開の地で、新しい産業を作ることになるため大変なことが多い。今回、ジェネリック医薬品市場を開拓し、シェアトップの沢井製薬と組めたことで、新しい産業を作り上げる観点で心強いパートナーになる」と話した。

販売を行う沢井製薬の主力事業は、ジェネリック医薬品(後発医薬品)だが、後発薬の市場が飽和する中、新規事業としてデジタル医療機器事業を今後の収益の柱1つに掲げている。CureAppとはNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の治療用アプリ開発でも手を組むほか、片頭痛を治療する医療機器の開発なども手掛ける。

「HAUDY」の販売では疾患を啓発する活動に力を入れる。同社が行ったインターネット調査ではアルコール障害(AUD)を知らない人は72.1%にも上った。また、アルコール依存症の患者は推計で107万人以上いるが、実際の治療患者は約5万人にとどまるという。活動を通じて認知度を上げ、医療機関への受診を促す。

一方で、医療機関には新設したデジタル医療機器推進室の専任MR(医療情報担当者)を通じてアプリ導入を働きかける。初年度の対象患者数は1300人、売り上げは約1億円を見込む。

木村元彦・沢井製薬社長
木村元彦・沢井製薬社長

木村元彦・沢井製薬社長は会見で「薬価の引き下げなどが要因でジェネリック医薬品の市場は、非常に厳しいフェーズにある。その中で、今後の成長という観点からデジタル領域に着目し新規事業で立ち上げた。今回、当社では初の治療補助アプリの販売で期待している。これを契機に、この分野を本格化していきたい」と意気込みを述べた。