emol、AMED実証済みCBT搭載の成人ADHD治療アプリの性能評価を開始、薬事承認目指す
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精神疾患向け治療用アプリ開発のemol(エモル、東京・豊島区)は7月31日、国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター(NCNP、東京・小平市)と、成人ADHD(注意欠如・多動症)の治療用アプリの性能評価を開始したと発表した。医療機器プログラム(SaMD)での薬事承認を目指す。
アプリは、AMED(日本医療研究開発機構)が採択した研究課題「成人期の注意欠如・多動症に対する個人認知行動療法(ADHD-CBT)統一プログラム」で開発と有効性が検討されたCBT(認知行動療法)プログラムをデジタル実装した。
ADHDは、不注意・多動性・衝動性といった行動特徴によって、学業や就労、日常生活に著しい支障を来す神経発達症。幼児期から青年期に初めて診断されることが多いが、適切な診断や治療機会を逃したまま成人期に至るケースがあるという。諸研究では日本国内の成人人口の1~4%(推計で約80~320万人)が該当すると報告されている。
エモルによると、成人ADHDに対しCBTは欧米で有効性が示されており、薬物療法を補完する非薬物治療として国際的ガイドラインにも位置付けられているという。一方で、国内では専門家不足で提供体制が限定的で、デジタル化による普及が急務としている。
同社では、こうした課題を背景に、医療アクセスの格差や継続性をデジタル技術で補完すべく、NCNPで臨床効果が検証されたCBTプログラムを基盤に、CNPの臨床知見と、エモルのモバイルアプリ設計・開発ノウハウを掛け合わせたスマートフォンアプリの開発に着手した。
成人ADHDで推奨される治療選択肢の1であるCBTを医師の指導の下で、アプリを通じて安全で継続的に提供。患者が場所や時間の制約を受けることなく行動習慣の改善と長期的な自己管理することを支援し、専門家不足による治療アクセス課題の補完を目指す。
今後は、性能評価の結果を踏まえ機能とユーザーインターフェースをブラッシュアップし、臨床試験を経て薬事承認申請を目指す。
エモルではアプリでCBTが普及すれば、専門医が少ない疾患でもガイドラインに沿った治療が均質で提供が可能になり、患者は遠方の病院に何度も通うことなく、最低限の受診で自宅でのCBTを実施できるようになるという。
同時に、ドクターショッピング(症状改善を求めて複数の医療機関を転々と受診すること)の抑制や診療コスト削減が見込めると共に、医師も外来枠を重症患者の診療に充てられるなど、医療体制全体の効率化が期待できるとしている。