NEC、がん治療効果を高める薬剤組み合わせをAI予測、作業時間半減が可能に

NECは6月19日、中外製薬と、がん疾患に対する治療効果を高める薬剤の組み合わせを、AI(人工知能)で予測する実証実験を実施したと発表した。実証では薬剤の組み合わせ調査と予測時間を約50%短縮できることを確かめた。

がんには「薬剤併用療法」と呼ばれる2種類以上の薬剤を組み合わせて使用する治療法がある。単剤投与時と比べて高い治療効果が期待される一方で、複数の薬剤の組み合わせを予測するには論文や臨床試験データなどを基に、薬剤情報を手作業で調査や分析する必要があり、多大な時間がかかることが課題だった。

NECでは、臨床試験データベース「AACT」や生化学データベース「ChEMBL」で、公開されているがんや薬剤に関する膨大な情報を、独自のグラフベースAIに学習させ、治療効果を高める薬剤の組み合わせを予測するシステムを構築した。

システムは、がん治療に投与する対象薬剤名を入力すると、対象薬剤の有効性を高めるための組み合わせ候補を迅速に提示する。また、組み合わせ候補の予測根拠も提示し、予測結果の理解や妥当性検証の補助を可能にした。

実証実験の概要
実証実験の概要

実証実験では、臨床試験データベースから約400組のがん治療薬の組み合わせ情報をランダムに抽出し、片方の薬剤情報を本システムに入力。併用療法で、がん治療の効果が高められる薬剤として、もう一方の治療薬を予測できるかを評価した。

実証は、2024年12月から2025年3月に実施。その結果、システムが提示した、薬剤の組み合わせ候補予測の精度が、事前に規定した基準を超え、予測根拠の納得性が高いことを確認。同時に、中外製薬が行う従来の検索方法と比較して薬剤の組み合わせの予測作業時間を約50%短縮できることが分かった。

今後は実証実験の成果を基に、がん治療の効果を高める薬剤の組み合わせを予測るAIソリューション開発と実用化を進める。