NTT、オリンパスとリアルタイム診断可能なクラウド内視鏡システムの実現性を実証
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NTTは11月19日、オリンパスと、NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の超大容量・超低遅延の基盤「APN(オールフォトニクス・ネットワーク)」を使い、クラウドに構築した内視鏡システムの実証実験を行い、150kmを離れた遠隔地のシステムでも映像処理が遅延することなく、内視鏡医がリアルタイムで診断と治療が可能なことを実証したと発表した。
実証実験は、オリンパスの内視鏡とAPNをクラウド上で組み合わせた「クラウド内視鏡システム」でリアルタイムの内視鏡映像処理を実施した。クラウド内視鏡システムは、内視鏡映像を入力する機器(エッジデバイス)から約150km離れた映像処理を行うサーバー間をAPNに接続して構築。システムは、内視鏡内での処理を想定した約5mのケーブルを使ったローカル接続と、約150kmのAPN接続の2つで構成し、画像処理を行った。
実験では、まず、内視鏡スコープで撮影された映像を、内視鏡プロセッサを経由してエッジデバイスに送り、映像を非圧縮のままでAPNを通じてサーバーに転送。次に、映像を受け取ったサーバーがAI(人工知能)などを使って画像処理を行い、処理済み映像をエッジデバイスに返送し、操作者が閲覧するエッジデバイスに接続したモニターに処理後の映像を出力した。その後、モニターに出力された映像を測定用機器で撮影し、ネットワークのデータ遅延計測と映像比較評価を行った。
NTTとオリンパスでは、リアルタイムで映像を確認しながら検査や手術を行うクラウドの内視鏡システムは、内視鏡スコープで撮影された映像を映像処理し操作者に遅延なく表示する必要とみて、今回の実験では、約150kmのネットワークで許容するデータ転送の遅延値を、映像の1フレーム以内(16ミリ秒以内)を目標に設定した。
実験の結果、遅延値は1.1ミリ秒で、目標の10分の1で転送が可能なことを確かめた。また、内視鏡操作者が目視確認した映像比較評価の結果で、ローカル接続とAPN接続のシステム間で、遅延や揺らぎで差分が感じられないことを確認。
このことから、内視鏡のクラウド化の実現に必要な高画質映像を伝送する大容量ネットワークと、検査映像を遅れることなく表示する低遅延のネットワークをAPNで構築可能なことと、映像処理など負荷の高い一部の機能をクラウド上で分担する「クラウド内視鏡システム」が実現可能なことを実証できたとしている。
2社は今後、実験結果を踏まえ、クラウド内視鏡システムの社会実装に向け、ネットワーク伝送での医療データの高度なセキュリティー対策や、複数の病院間での映像情報を共有といった技術課題を検討。NTTが医療機器をクラウド化する際の医療機器向けネットワークのレファレンスモデルの確立、オリンパスは、クラウド内視鏡システムなどに最適なネットワークとレファレンスモデルの確立に取り組む。