富士フイルム、統合診療支援PFでAI活用の外来患者転倒リスク予測と診療データ参照支援の新機能

富士フイルムは7月15日から、病院内の部門システムのデータを一元管理する統合診療支援プラットホーム(PF)「CITA Clinical Finder(シータクリニカルファインダー)」で外来患者の転倒リスクを予測する「外来患者向け転倒リスク予測AI機能」と、日常の診療業務時に医療従事者が参照する確率が高い診療データを予測して提示する「参照支援サジェストAI機能」のAI(人工知能)を活用した新機能の提供を開始すると発表した。富士フイルムメディカルを通じて販売する。

「CITA Clinical Finder」は、電子カルテ上の情報や、放射線、内視鏡、生理検査、病理検査などの部門システムに保存されている画像やレポート、診療文書などを統合管理できる診療支援システム。

患者ごとに情報を統合し、診療場面に応じて必要な情報を閲覧できる機能や、複数患者の診療情報を一覧で表示し、入院患者の状況などを一括で視認できる機能、検査レポートの見落としを防ぐ既読管理機能などを搭載する。地域の中核病院を中心に約500の医療施設に導入されている。

「外来患者向け転倒リスク予測AI機能」のユーザーインターフェース(上)と「転倒リスクおよび転倒リスク要因欄」の拡大図(下)。外来患者を転倒リスクの高い順にリスト表示し、転倒リスクスコアが高い患者を赤く強調することが可能。3つまで併記される転倒リスク要因に応じて、医療従事者が対応要否を判断できる
「外来患者向け転倒リスク予測AI機能」のユーザーインターフェース(上)と「転倒リスクおよび転倒リスク要因欄」の拡大図(下)。外来患者を転倒リスクの高い順にリスト表示し、転倒リスクスコアが高い患者を赤く強調することが可能。3つまで併記される転倒リスク要因に応じて、医療従事者が対応要否を判断できる

新たに提供する「外来患者向け転倒リスク予測AI機能」は、「CITA Clinical Finder」に蓄積された疾患情報や処方情報などの患者の診療情報とAIを活用し、外来患者の転倒リスクをスコア化する機能。転倒リスクの高い患者を上から順番にリスト表示するほか、スコアの算出に影響を与えた年齢や既往歴などの転倒リスク要因も併記する。また、転倒リスクのスコアと要因に応じて、医療従事者が付き添いや車いす送迎といった対応の必要性やコメントを患者ごとに記入し、院内で情報共有することが可能。

富士フイルムによると、医療現場で、骨折や頭部外傷などの大けがにつながる患者の転倒事故は高い頻度で発生しており、患者の生命予後やQOLに対して深刻な影響を及ぼす可能性があるため、多くの医療機関で転倒リスク低減を医療安の重要課題の1つとして、入院患者を対象に、転倒リスクアセスメントシートで転倒予防策を講じているという。

一方で、外来患者は、患者数が多いことや限られた滞在時間のため、状態の把握が難しく、同様の取り組みや転倒予防策を講じることは困難になっている。新機能では、外来で高リスク患者の効率的な把握と転倒防止策の展開を支援が可能としている。

「参照支援サジェストAI機能」のユーザーインターフェース(左)。検査画像や文書など、医療従事者が参照する可能性が高いデータ(右)をリスト表示する
「参照支援サジェストAI機能」のユーザーインターフェース(左)。検査画像や文書など、医療従事者が参照する可能性が高いデータ(右)をリスト表示する

一方、同じく新機能の「参照支援サジェストAI機能」は、医療従事者が「CITA Clinical Finder」を起動や閲覧、操作する際に、医療従事者の職種や所属診療科、直前に参照していたデータ、入院日や外来日などの患者の診療状況に応じて、参照する可能性が高いデータを、AIが予測し提示する機能。

富士フイルムでは、医療従事者は、患者の属性情報や既往歴、検査画像など、さまざまな情報を参照して手術の準備や治療計画の立案を行っており、診察や治療の前後など、場面や目的によって参照すべき情報が異なるため、膨大な情報の中から必要な情報を探すために時間と手間をかけていると説明。

新機能はこうしたデータ検索や参照の時間や労力などの負荷軽減に役立つとしている。AIは、実際に参照されたデータを継続的に学習するため、利用し続ければ、より高い精度で参照データを予測できるようになるという。