近畿大、胸部X線撮影やCT検査時の呼吸状態をミリ波センサーで非接触計測するシステム開発
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近畿大学は1月28日、電子部品メーカーのSMK(東京・品川区)と、ミリ波センサーを使った胸部のX線撮影やCT検査時に患者の呼吸状態を非接触で確認できるモニタリングシステムを開発したと発表した。
開発したのは、胸部のX線撮影やCT検査の機器に取り付けて使用するモニタリングシステム。SMKのミリ波センサーを搭載した。ミリ波センサーは、非常に高い周波数の電磁波のミリ波を使ったセンサーで、離れた対象物との距離、速度、角度の測定が可能。直進性が非常に強く、さまざまな環境性で使用できるほか、機器の小型化も図れる。
モニタリングシステムは、非接触で測定が可能で、患者の負担が少なくて済むほか、衣服の上からでも正確な呼吸状態の検出できる。また、衣服を脱ぐ必要がないため、プライバシーに配慮した呼吸状態の確認が行える。加えて、従来の呼吸モニタリング機器と比べて大幅なコスト削減が図れるという。
システムは、門前一・近畿大学医学部放射線医学教室(放射線腫瘍学部門)教授、小坂浩之・近畿大学病院中央放射線部技術主任(大学院医学研究科医学物理学専攻非常勤講師)らを中心とした研究グループがSMKと共同研究で開発した。患者の呼吸状態の確認はこれまで、検査実施者の目視で行われていたが、今回のシステムを使えば、機器で正確に把握することが可能なるとしている。
研究グループでは、システムの精度検証も実施。6カ月~64歳の健康なボランティア20人を対象に、24GHzミリ波センサーを使った呼吸波形の計測を行った。具体的には、被験者の胸腹部にミリ波を照射し、その反射波から呼吸による体表面の動きを波形で取得。同時に、従来の確認方法の腹壁マーカーでの計測も行い、両者の波形を比較した。
検証の結果、従来は困難であった乳幼児(6カ月)や小児(4歳)の呼吸状態も正確に検出できることを実証した。また、CT撮影時の仰向けの状態でも、胸部X線撮影時の立位の状態でも安定した測定が可能なことを確かめた。
研究グループでは今後、SMKと連携し、システムの臨床応用に向け改良と検証を進める。また、医療機器メーカーと連携して製品化に向けた開発を進め、2026年度中の薬事申請を目指す。製品化後は全国の医療機関に導入を進め、診断イメージング分野の呼吸管理の標準化につなげたい考え。
さらに、放射線治療分野での利用も見込む。呼吸による腫瘍の動きを正確に把握することが重要な肺がんなどの放射線治療で、システムを使って、呼吸状態をリアルタイムで確認しながら、精密な放射線治療が実現できるとみている。