大阪けいさつ病院、大林組の無影灯不要の天井照明型手術室「オペルミ」導入

天井照明型手術室「オペルミ」

大林組は12月20日、大阪国際メディカル&サイエンスセンター(大阪市)と、大林組が大阪大学大学院医学系研究科と共同開発した天井照明型手術室「オペルミ」を、2025年1月に開院予定の大阪けいさつ病院(同)に設置すると発表した。

「オペルミ」は、従来の手術室に設けられている無影灯を使わず、天井全面に無影灯と同等の照明機能を持たせた手術室。術野を照らす可動式の高輝度、高演色の50基の自動シューティングライトと、手術室全体を均等に照らす、68基のフルカラーLED(発光ダイオード)導光板パネル照明を組み合わせることで、無影環境を実現した。

大林組によると、新しい手術室は、これまでの手術室で起きていた、無影灯の熱による手術を行う医療関係者の負荷を低減すると共に、手術室の気流が改善し、感染リスクの低減が見込めるという。

同社では今回、大阪けいさつ病院への設置で、2点の改良を実施。1つ目は、導光板パネル照明へのシューティングライトの取り付けで、導光板パネル照明に取り付ける自動シューティングライトを開発、導入した。

(左)導光板パネル照明に取り付けたシューティングライト、(右)シューティングライトでより深い術野まで効果的に照射可能にした
(左)導光板パネル照明に取り付けたシューティングライト、(右)シューティングライトでより深い術野まで効果的に照射可能にした

従前のタイプは、高出力と高演色のLEDシューティングライトを手術台上部に設置し、それを取り巻く形で天井に無影環境を再現する導光板パネル照明を配置していた。自動シューティングライトを開発したことで、無影環境を保持したまま照明角度の調整範囲が広がり、手術中の視野をより柔軟に照らすことを可能にした。

また、大阪けいさつ病院の心臓血管外科の医師と共同で術野の検証を進めた結果、術者の背後にもシューティングライトを設置し、照射することで、より深い術野まで効果的に照射可能なことも確認した。

(左から)タブレット操作画面イメージ、青色、緑色の照明の調色イメージ
(左から)タブレット操作画面イメージ、青色、緑色の照明の調色イメージ

2つ目は、専用タブレット端末の導入。タブレット端末で、シューティングライトと導光板パネル照明の一元管理と操作ができるようにした。タブレット上で照射したい部位をタップするだけで瞬時にシューティングライトを照射できるほか、手術内容や状況に応じた照明色への調整が可能。例えば、視認性を向上させるため、手術画像を確認するときは照明を青色に変更、出血部位を確認するときは血液と反対色の緑色に変更するといった操作が行える。

大林組では、オペルミが無影灯を必要としないことから、手術室設置上の天井高の制約を受けず、患者の搬送負担軽減を目的に、病棟の各フロアに配置したり、既存の病棟内に増設したりするなどフレキシブルに設置が可能という。また、病院新築時は手術エリアの階高を低く設計できることから、建設費のコストダウンが図れるとしている。

ハイブリッド救急処置室のイメージ
ハイブリッド救急処置室のイメージ

今後は、血管撮影装置「アンギオグラフィー」やロボット手術装置との機器同士の接触、干渉が少ない特長を生かし、ハイブリッド手術室やハイブリッド救急処置室への適用拡大に向けて検証を進める。