ディリーバ、外科特化型生成AIを開発 慶大病院で実証 26年中の事業化目指す
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開発した外科特化型生成AIを活用した手術の様子
慶應義塾大学医学部発の医療系スタートアップのDireava(ディリーバ、東京・千代田区)は3月27日、手術状況をリアルタイムで理解し、対話する外科特化型生成AI(人工知能)「Surgical VLM(サージカルブイエルエム)」を開発したと発表した。
開発した外科特化型生成AI「Surgical VLM」は、大量の術中画像と構造説明文のデータセットを学習し、外科手術中の画像から解剖構造や手術状況を認識して、日本語の説明文を自動生成する視覚・言語統合型AI基盤モデル。
医療現場の膨大なデータを生成AIに学習させることで、手術の進捗(しんちょく)をリアルタイムに把握し、外科医や医学生と対話可能なモデルの構築に成功した。日本の専門医が監修した高品質な医療データのみを学習させ、生成AI特有のハルシネーション(幻覚)を排除したという。

同社は「Surgical VLM」の臨床有用性や教育効果を検証するため、慶應義塾大学病院手術室で実証試験を2月20日に実施。実証実験では手術教育で必要とされる評価項目を同院の協力で設定し、解剖学的正確性、臨床的有用性、文章の流暢性における評価で80%以上を満たすかどうかを検証した。
実証の結果、解剖学的正確性が84.7%、臨床的有用性が82.9%、文章の流暢性が97.4%と目標値を満たした。同社は、この結果から、開発した生成AIが実際の外科手術の進行状況を正確に認識することを確認するとともに、手術現場で求められる適切な情報提示や、専門的な外科用語を使った自然な対話が成立するなどの医療教育現場での実用性も確認できたとしている。
これまで外科領域の生成AI活用では、画像認識で患者の臓器や血管などを特定する「解剖認識(目の機能)」の活用が進められてきたが、認識された情報に対し、複雑な手術の手順、患部の状況を理解し、「次にどうすべきか」「何に気をつけるべきか」を推論・対話できる「高度な状況理解(頭脳の機能)」は未実装で、大きな課題となっていたという。ディリーバが開発した外科特化型生成AIは、こうした課題を解決し、医療教育現場で求められる水準を満たすAI基盤モデルとしている。
外科特化型生成AIは、NEDOと経済産業省の生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」の一環で開発した。NEDOは2024年度から、生成AIの研究開発と支援で、経済産業省と「GENIAC」プロジェクトを進めている。2026年3月末時点で、のべ53社が生成AI基盤モデルの開発に取り組む。
ディリーバはその1社で、これまでAI搭載のプログラム医療機器「手術映像認識プログラム・キノスラ」を開発し、2025年12月9日付で厚生労働大臣から製造販売承認を取得している。同社は2025年7月にGENIACに採択され、自社開発した基盤モデルをベースに外科領域のAI開発に取り組んでいた。
今後は、外科特化型生成AIの事業化に向け研究開発と実証を行い、2026年中のサービス提供開始を目指し、対応可能な症例の拡大やシステム操作性向上に向けた実証実験を追加実施する。