ユビー、福岡・新古賀病院が生成AIの医療文書作成で医師の業務時間を月30時間以上削減

ユビー(東京・中央区)は4月14日、新古賀病院(福岡・久留米市)が、AI(人工知能)が文章作成などを行う病院向けAIサービス「ユビー生成AI」で、医療文書作成業務の効率化し、医師の業務時間を、診療科全体で月30時間以上を削減したと発表した。

新古賀病院は、福岡県久留米市を拠点に24時間365日対応の救急医療を提供する地域医療の中核病院。福岡・筑後地域を始め、近隣県からの救急患者も積極的に受け入れており、早くからICT(情報通信技術)を活用し、医療の質向上と働き方改革に注力してきた。

こうした背景から、ユビーのAI(人工知能)を使った事前問診サービス「ユビーAI問診」を導入。成果を上げる一方、医師の退院時サマリや診療情報提供書(紹介状)、看護師の看護添書など、医療文書作成業務の負担が課題で残っていた。そこで、一層の業務効率化を目指し、2024年5月から「ユビー生成AI」の採用を決めた。

「ユビー生成AI」の利用前と利用後の業務時間の比較
「ユビー生成AI」の利用前と利用後の業務時間の比較

同院では、循環器内科、脳神経外科、心臓血管外科、救急科と複数の診療科で段階的に「ユビー生成AI」を導入。医師が退院時サマリや診療情報提供書(紹介状)など、ドクターズクラークは、退院時サマリ、診断書、主治医意見書、診療情報提供書など、看護部は看護添書などで活用する。同院では「ユビー生成AI」を導入した結果、診療科の対象業務全体で約174時間かかっていた作業時間の32時間を削減した。書類作成業務時間全体の約2割の削減に相当するという。

中でも、看護部で顕著な成果が表れており、患者1名あたりの看護添書の作成時間を従来の20-~30分から10分程度まで短縮。一病棟あたり月間で約5時間の業務時間を創出した。同時に、医療文書作成業務の標準化が進み、品質も向上。業務負担の軽減と質の高い医療文書作成の両立を実現した。

電子カルテと「ユビー生成AI」のシステム連携図
電子カルテと「ユビー生成AI」のシステム連携図

新古賀病院では、さらに電子カルテと「ユビー生成AI」のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)機能を活用したシステム連携で、さらなる業務効率化にも取り組む。具体的には、「ユビー生成AI」のAPI機能で、データ抽出から生成までの一連の作業を自動化する。その結果、さらに作成時間を最大で70%削減できると見込む。

また、一患者のデータを基にした「ユビー生成AI」の活用だけではなく、API機能で複数患者データをまとめて連携する実証実験にも着手した。実証を通じて、各種のスクリーニングを夜間などに一括処理し、その結果を「ユビー生成AI」の画面上や、電子カルテの患者一覧上での表示やアラート機能として活用できるかを確かめる。

今後は、医師やドクターズクラーク、看護部での成果を踏まえ、リハビリテーション課など人員数の多い職種への「ユビー生成AI」の展開を積極的に進めていく方針。看護部門では、高い成果を得たことから、全病棟に展開する。また、新古賀病院での成果を踏まえ、系列病院の古賀病院21と新古賀リハビリテーション病院みらいでも「ユビー生成AI」の導入を進める。

電子カルテとの連携では、現在、看護添書で検証している「データ抽出から文書生成までの自動化」を、退院時サマリや診断書などの医療文書作成業務に拡大する。中長期的には、複数患者のデータを一括処理する機能の開発も検討する。