敬和会、オープンのRPA導入で36業務を自動化、年8800時間を削減

オープンは7月18日、敬和会(大分・大分市)が、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール「BizRobo!(ビズロボ)」を導入したと発表した。

敬和会は2020年以前から、医療データ活用などのデジタル推進に積極的に取り組んでおり、内製でDX推進プロジェクトをスタート。その一環で、職員の負担となっていた「カルテ業務の自動化」でRPAの活用を検討。法人内のデジタル推進局が主導して2022年に複数製品のトライアルを実施し、カルテ業務の負担軽減にRPAが有効であると確認した。

その後、製品選定に入ったが、対象業務の洗い出しやロボット開発で、敬和会が主導権を持ちながら、伴走するベンダーと密なコミュニケーションが必要との考えから九州に拠点を持ち、伴走支援体制が整っているオープンを評価し、将来的な法人全体での活用も見越して、2023年にサーバー型「BizRobo! Lite+」を導入した。

具体的なRPAの活用では、例えば、患者の「感染兆候」の確認を自動化。対象患者の電子カルテデータをロボットが読み取り、体温が37.5度以上で感染兆候10項目中1項目でも当てはまった患者の情報を、毎朝担当看護師に自動で通知できるようにした。

開発した「感染兆候」確認ロボットの例
開発した「感染兆候」確認ロボットの例

これまでは手術後や点滴、ぼうこう留置カテーテルなどのデバイス使用後に、看護師が患者1人1人のカルテを確認し感染兆候の有無を確認していた。作業は入院患者は1日あたり200人近く、手術件数は年間で約1700件、デバイス使用は年間で約4万6000件と対象が膨大で、チェック作業に毎日500分以上の時間がかかっていた。

この確認をRPAに置き換えたことで、看護師のカルテ確認作業がなくなり、精神的負担が軽減されると共に、感染兆候への早期対応が可能となった。結果、医療サービスの質向上につながったという。

敬和会のデジタル推進局は、現場部門所属の有志メンバーで構成。理学療法士、ケアマネジャー、作業療法士などが兼任する。また、7施設を持つ敬和会のデジタル化施策をデジタル推進局が統括しており、1つの施設から上がったニーズで開発したロボットを、ほかの施設に応用することも容易できる、効率的な運用体制を構築している。

このような開発と運用体制で、ロボット開発と、ほかの施設や部門への効率的な横展開を重ねた結果、導入から2年が経過した現在、36業務でRPAのロボットが稼働し、年間で8800時間の業務を削減した。労務コスト換算で約2400万円に相当するという。

今後は法人内での体制づくりや人材育成の経験を外部にも拡大。地域の医療機関と連携しながら、DXを推進する環境を整えていく考え。そのために相互連携と支援を円滑に実行できる関係性の構築にも取り組む方針。