両備システムズ、クラウドシステム「COLLECREW」で巡回健診のDXを加速

両備システムズのブース

巡回健診の現場では、検査の進捗(しんちょく)状況の把握や記入漏れ防止、健診後の事務処理など、多くの負担が残る。こうした課題解消に向け、両備システムズは巡回健診会場とデータセンターをオンライン接続し、健診結果をリアルタイムで登録・管理できるクラウド型システム「COLLECREW(コレクル)」の提供を8月から開始した。

同社は、7月16日から東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催された「国際モダンホスピタルショウ2025」で「COLLECREW」を初出展。既存の健診支援サービス「AITEL(アイテル)」「SASAWELL(ササウェル)」と組み合わせた「WELLSHIPシリーズ」の最新ソリューションとして紹介した。(取材:医療テックニュース編集部)

巡回健診の現場課題に応える新システム

巡回健診会場では、検査ブースごとの進捗や入力状況をその場で把握することが難しく、検査漏れや記入ミスが発生しやすい。また、健診後に拠点へ戻ってから行うデータ登録や確認作業は職員の大きな負担となってきた。加えて、端末やICカードの持ち出しに伴う個人情報漏えいリスクや、VPN(仮想私設網)脆弱(ぜいじゃく)性を突くセキュリティー事故の懸念もある。

「COLLECREW」は、こうした現場課題を解消するため、巡回健診会場とデータセンターを閉域網で接続。検査結果をその場でクラウドに反映し、基幹システムともリアルタイムで連携できる環境を実現した。

健診結果収集システム「COLLECREW(コレクル)」の全体イメージ
健診結果収集システム「COLLECREW(コレクル)」の全体イメージ

タブレット運用で業務効率化と精度向上を両立

健診会場では血圧、身長・体重、診察など複数のブースが設置されているが、「COLLECREW」はどのブースでも柔軟に利用できるタブレットを活用している。QRコードで受診者を識別し、計測機器と連携することで、結果は自動的にクラウドに即時反映される。シンプルな動作設計により、事後処理の手間を大幅に削減できる。

入力画面は検査項目ごとに最適化されており、アラート機能や異常値の閾値(いきち)設定によって入力漏れや誤入力を即時通知する。入力値が前回データと大きく異なる場合は「赤色(明らかな誤り)」や「紫色(確認が必要)」といった色分けで警告が表示され、迅速な確認や修正が可能。健診項目を飛ばした場合はエラーが表示され、受診漏れを防止する。

進捗管理機能では、全ブースの進行状況をクラウド上で一元管理できる。リーダーは混雑状況をリアルタイムで把握し、必要に応じてスタッフを再配置することで、属人的な判断に依存せず運営を最適化できる。Android端末の採用で、視認性が高く直感的に操作できるようになり、事務負担の軽減と精度向上を両立している。

セキュリティー面では、閉域網通信でデータの安全性を確保。万が一、端末が紛失しても、SIMを無効化することで第三者からのアクセスを防ぐ。結果は基幹システムへ即時に連携され、事務処理や受診者への結果通知までの時間を大幅に短縮できる。

健診会場の進捗状況を確認できる
健診会場の進捗状況を確認できる

「WELLSHIP」シリーズが描く巡回健診の新しい形

「COLLECREW」は、健診予約から結果配信までを包括する「WELLSHIP (ウェルシップ)シリーズ」の一部として提供される。シリーズには、予約・問診から結果管理までを効率化する「けんしんAll in One『AITEL』」、健診機関と企業・学校をつなぎ健康情報を一元管理する健康経営・健康管理支援システム「SASAWELL」が含まれる。これらのツールが、健診の「予約」「問診」「健診実施」「結果管理・配信」「労基報告」までの一連の流れを、スムーズに連携し支援する。

「AITEL」は、ウェブや電話での予約受付、ウェブ問診、結果配信までをカバーし、「COLLECREW」と連携することで巡回健診や施設健診のデータがシームレスに管理される。受診者は健診結果をオンラインで確認でき、健診後の自己管理にも役立つ。

「SASAWELL」は、健診機関と企業間のデータ授受を効率化するプラットホームだ。従来は紙や独自フォーマットで提出されていた受診者名簿をオンライン化し、不備や抜け漏れを自動でチェック。健診機関は正確なデータを受け取ることで事前準備を効率化できる。

健診結果はクラウド上で受診者と企業が即時に共有でき、企業は迅速にフォロー対応を行える。受診者は、スマートフォンから自身の結果を確認することができ、企業はダッシュボード機能で全体傾向を分析し健康経営に活用できる。2025年の秋にはストレスチェック機能の追加を予定しており、産業医の面談や就業判定への応用を見込んでいる。

健診機関業務のDXをトータルでサポートする「WELLSHIP(ウェルシップ)」シリーズ
健診機関業務のDXをトータルでサポートする「WELLSHIP(ウェルシップ)」シリーズ
受診者はスマートフォンアプリから自分の健診結果を閲覧可能
受診者はスマートフォンアプリから自分の健診結果を閲覧可能
企業はダッシュボード機能で全体傾向を分析し健康経営に活用
企業はダッシュボード機能で全体傾向を分析し健康経営に活用

健診機関の差異化と価値向上へ

「WELLSHIP」シリーズは、健診業務の効率化だけでなく、健診機関のサービス品質向上にもつながる。今後は、健診結果を業種別に比較したり、ほかの機関の平均値や傾向と照らし合わせたりするベンチマーク分析機能を拡充し、健診機関が自らのサービス水準や特徴を把握できるようにする。こうした可視化は、企業の健康経営や戦略立案でのデータ活用にも直結する。