富士通、ソフトウエア改修をAIで自動化 医療・行政向けで先行

説明会に登壇した、岡田英人・富士通AI戦略・ビジネス開発本部本部長(左)と、國分出・富士通Japan特定プロジェクト対策本部本部長

富士通は2月17日、生成AI(人工知能)で、要件定義から設計、実装、結合テストまでのソフトウエア開発の全工程を自動化する基盤「AI-Driven Software Development Platform(エーアイ・ドリブン・ソフトウエア・デベロップメント・プラットフォーム)」を開発し、運用を開始したと発表した。既存の業務ソフトウエアの改修・更新作業で活用する。まず医療・行政向けのソフトウエアで導入する。4月からは外部のシステム開発者にも提供する。

「AI-Driven Software Development Platform」の概要
「AI-Driven Software Development Platform」の概要

基盤は同社のLLM(大規模言語モデル)「Takane(タカネ)」と、富士通研究所が開発した大規模システム開発向けAIエージェント技術で開発した。「要件定義」「設計」「製造」「テスト」など各工程のAIエージェントが、それぞれ担当する工程を協調して実行し、ソフトウエアの改修を自律的に完了まで進める。改修したソフトはエンジニアが最終的に確認する。

AIが作成したソフトの品質を担保する仕組み
AIが作成したソフトの品質を担保する仕組み

AIが作業した改修の品質を担保する仕組みも構築した。改修後の内容に曖昧さや抜け漏れがあれば、自動でやり直させる。現場の作法やルールなど、複数の層でチェックし品質を高める。ベテランエンジニアの作業や思考法を取り込んだという。

岡田英人・富士通AI戦略・ビジネス開発本部本部長
岡田英人・富士通AI戦略・ビジネス開発本部本部長

岡田英人・富士通AI戦略・ビジネス開発本部本部長は、17日の説明会で「現在の課題は、暗黙知をいかにAIに理解させるかということと、古くて複雑な大規模システムをいかにAIドリブンに変革するか。そうした、システムプロセスを変えることが富士通の命題」と説明した。

対象となる医療・行政向けパッケージソフト
対象となる医療・行政向けパッケージソフト

まずは、2026年度中に、子会社の富士通Japanが手掛ける医療と行政向けのパッケージソフト67種類の改修・更新作業で活用する。医療向けは電子カルテ、医事会計システムなど30種類、行政向けは公共事業や住民情報など37種類で導入する。医療、行政の分野は法令改正や制度の見直しが毎年のように発生するため、ソフトの改修が継続的に必要になり、技術者の負担が大きいことから選定した。

最初の取り組みとして、2026年診療報酬改定に伴う医療向けパッケージソフトの改修を2026年1月に開始した。改正した法令文書をAIに読み込ませると、更新が必要な機能などをまとめた要件定義書や設計図を作成し、開発、テストまでを自動で行う。

2024年度の診療報酬改正対応への実証概要
2024年度の診療報酬改正対応への実証概要

取り組みに先駆けて行った実証では、2024年度の診療報酬改正の文書(769ページ)の約300件の変更案件のうち1案件について、従来のソフトウエア開発手法で3人月(3人の技術者が1カ月で働く作業量)が必要だった改修期間を4時間に短縮し、約100倍の生産性を達成したという。

AIによるソフトの改修は電子カルテ「HOPE LifeMark-HX」を導入する大学病院や急性期病院など約60の大規模病院での活用を見込む。法改定を反映したアップデートパッチを提供する。同社の電子カルテのユーザー会を通じて協力する医療機関を募り、改修内容や使い勝手などの検証も行う。費用は電子カルテの場合、一定の回数までは保守・メンテナンス代に含め、規定の回数を超えた場合は従量課金にシフトする料金プランを想定している。

國分出・富士通Japan特定プロジェクト対策本部本部長
國分出・富士通Japan特定プロジェクト対策本部本部長

國分出・富士通Japan特定プロジェクト対策本部本部長は、説明会で「これまでは、診療報酬改正に対してシステムの改修が後手後手になっていた。AIの活用でソフトウエアの法改正への対応が即座に可能になり、病院も新制度の開始に合わせて運用できるようになり、メリットは大きい」と語った。