千葉脳神経外科病院、TISのPHR基盤導入で「薬剤情報提供」を拡充
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TISは9月17日、千葉脳神経外科病院(千葉市)がPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)基盤サービス「ヘルスケアパスポート」を導入したと発表した。東和薬品と共同で実施した。
「ヘルスケアパスポート」は、患者や生活者の健康・医療情報を医療従事者や家族と共有できるPHRサービス。患者や生活者の情報共有の意思表示(オプトイン)を得て、健康や医療情報を安全に双方向で共有できる仕組みをサービス利用型で提供する。
千葉脳神経外科病院では、価値ある薬剤情報提供書をデジタルの形で患者に提供するため、プラットフォーム型のサービスの導入を検討。2024年夏に医薬品取引先の東和薬品を通じて、TISの「ヘルスケアパスポート」を紹介を受け、「病院、患者、家族といった関係者全員がクラウド上の同一ファイルにアクセスできる点」と「ファイルをクラウド上に保存し、リンク情報を共有できる点」を評価し導入を決めた。
同院は、2019年から過去の全ての医療履歴を指す「ペイシェントジャーニー」を患者自身に知ってもらう施策に着手。入院患者一人一人の「ペイシェントジャーニー」を「薬剤情報提供書」として紙にまとめ、退院時に手渡している。「薬剤情報提供書」は、入院時のヒアリングや他院からの診療情報提供書(紹介状)に基づいて、薬剤師が作成する。病院にかかる前の既往歴まで全てを集め、連続性を持たせることで、マイナポータルでも取得できな情報を提供できる画期的な取り組みして運用している。「ヘルスケアパスポート」の導入はその一環となる。
導入にあたっては「ヘルスケアパスポート」を使った実証実験を2024年末から開始。具体的には、既に存在する「薬剤情報提供書」をデジタルで利用できるように、退院患者のスマートフォンに「ヘルスケアパスポート」のアプリをインストールしてもらうことに取り組んだ。
実証実験の開始当初、アプリのインストールは千葉脳神経外科病院の薬剤科が対面でサポートした。しかし、病院の人的リソースに制約があったことに加え、患者本人や家族が自らの意思で治療やケアに関する合意(コンセンサス)をデジタル情報としても得るため、退院患者が家族の支援のもと、自宅でインストールを行う方式に変更した。
その結果、2025年5月時点で、約40%(対象患者529名中212名)という非常に高いインストール率を達成した。同院では、「かさばらず、紛失しない」という利便性に加え、大規模災害などにより病院の電子カルテが参照できなくても、クラウド上の情報にアクセスできれば、被災地外から薬を調達することが可能な災害時の有用性、離れて暮らす家族も「ヘルスケアパスポート」を利用して医療履歴を共有できることから、退院時に同席した家族が患者に導入を勧めてくれるケースが多かったことが要因となり、高い導入率につながったと分析している。
千葉脳神経外科病院は今回、「薬剤情報提供書」の作成と「ヘルスケアパスポート」を組み合わせることで、病院が持つ価値ある情報を患者らに安全で分かりやすく届ける手段が整い、「薬剤情報提供書」を提供価値が向上したとみている。今後は運用上の検討を重ね「ヘルスケアパスポート」で、「傷病名」を「項目名」としてひもづく薬剤情報を記述できるように入力フォームの検討を進めるとしている。