NTTデータ、NTT東などと最新IT技術でウェルビーイング向上支援する実証施設オープン

(左から)岩井順子・ストーリーライン代表取締役CEO、矢野高史・NTTデータ第三金融事業本部保険ITサービス事業部戦略デザイン室室長、佐藤文武・NTT東日本ビジネス開発本部営業戦略推進部長

NTTデータは4月23日、NTT東日本などと、AI(人工知能)技術を活用して、働く人のウェルビーイング(心身の健康と幸福)向上を支援する実証施設「Wellness Lounge(ウェルネスラウンジ)」を、NTT東日本本社に5月19日からオープンすると発表した。施設を通じて、健康状態を見える化することで、オフィスワーカーが生活習慣を改善する行動変容につながるかを検証する。

「Wellness Lounge」は、リアルタイムの心身データの可視化と、それに合わせたウェルネス体験や環境の提供をコンセプトした施設。NTTデータが、国内外のさまざまな企業と組み、ウェルビーイングサービスの企画や展開を行う「ヘルスケア共創ラボ」の取り組みの一環で設立した。

利用者の心身状態を可視化し、その状態に合った飲食メニューを提供する「KAGEROU」
利用者の心身状態を可視化し、その状態に合った飲食メニューを提供する「KAGEROU」

施設は「KAGEROU(カゲロウ)」「HINATA(ヒナタ)」「KOKAGE(コカゲ)」の3つのエリアで構成する。「KAGEROU」は、利用者の心身状態を可視化し、その状態に合った飲食メニューを提供するカフェスペース。

エリアには、2つのモニタリングシステムを設置。1つはNTTのLLM(大規模言語モデル)「tuszumi(つづみ)」」と、次世代メディア処理AI「MediaGnosis(メディアグノシス)」を組み合わせたシステム。

カメラと音声で利用者の表情や声のトーンなどから、ストレス値を計測する
カメラと音声で利用者の表情や声のトーンなどから、ストレス値を計測する
計測後はその人の気分の傾向をタイプ別に分類して表示する
計測後はその人の気分の傾向をタイプ別に分類して表示する

カメラと音声で利用者の表情や声のトーンなどから、ストレス値を計測し、「優しい気分」「刺激を求める気分」など、その人の気分の傾向をタイプ別に分類して表示する。また、その結果を基に、利用者の状態に合った合った集中力を高めるなどの効果が見込めるドリンクやフードを提案する。

計測後はその人の気分の傾向をタイプ別に分類して表示する
計測後はその人の気分の傾向をタイプ別に分類して表示する

ドリンクは、カフェイン抽出技術を開発するスタートアップのストーリーライン(東京・世田谷区)が、カフェイン量を6段階で調節したコーヒーを用意。

バクテリコがメニュー開発したサンドイッチとスープ
バクテリコがメニュー開発したサンドイッチとスープ

フードは、腸内フローラケアサービススタートアップのバクテリコ(大阪市)がメニュー開発した腸内の活性化が期待できるサンドイッチやスープを提供する。

バイタルデータ測定ソリューション
バイタルデータ測定ソリューション

もう1つが、イスラエルのAIスタートアップのBinah.ai(ビナー)が開発・提供する非接触型のバイタルデータ測定ソリューション。カメラで利用者の肌を撮影し、色の変化から、心拍数やストレスなどのバイタルサインを測定。10段階の評価でその人の健康状態を可視化する。

「覚醒」をテーマにした「HINATA」
「覚醒」をテーマにした「HINATA」

「HINATA」は、「覚醒」をテーマにした、働く人の集中力の維持やストレス軽減を図るエリア。

利用者の感情や心理状態に合った香りを提供する
利用者の感情や心理状態に合った香りを提供する

イスラエルのスタートアップのSOLO(ソロ)が開発した感情分析システムを設置。AIが利用者の感情や心理状態を分析して、その結果に合ったアロマを提案する。

また、人間の体内時計に合わせて照明の明るさを調整する「サーカディアンリズム照明」も導入。利用者の集中力や疲労回復につなげる。

「鎮静」がテーマの「KOKAGE」
「鎮静」がテーマの「KOKAGE」

「KOKAGE」は「鎮静」をテーマにした先端技術を活用し睡眠の質を高める「スリープテック」を活用し、利用者の心身の休息を促すセルフメディケーションスペース。

脳波に作用し、リラクセーション効果もある音楽を聴きながら20分ほどの仮眠ができる
脳波に作用し、リラクセーション効果もある音楽を聴きながら20分ほどの仮眠ができる

脳波に作用し、リラクセーション効果もある音楽をヘッドホンで聴きながら20分ほどの仮眠ができる機器を用意。また、トドマツ森林の映像を映し出し、その香りを部屋に流すことで短時間でも深い休息ができるようにした。

佐藤文武・NTT東日本ビジネス開発本部営業戦略推進部長
佐藤文武・NTT東日本ビジネス開発本部営業戦略推進部長

NTT東日本の佐藤文武・ビジネス開発本部営業戦略推進部長は、施設への参画について「NTT東日本は地方の企業や地方自治体とビジネスをしている。その中で、今回は『ウェルビーイング』にフォーカスし、オフィスワーカーの心身の健康を支援するサービスに着目した。今は地域でもウェルビーイングが注目されている。まずは、我々の新宿・初台エリアから始めてノウハウを積み、地域に展開していきたい」と説明した。

施設の実証は1年程度を行う計画。オープン当初の利用者は、NTT東、NTTデータ、ストーリーライン関係者などに限定する。実証中は月2000人程度の利用を目指す。その後、施設に関心を持つ企業や団体などにも開放する。一般開放は施設利用状況で検討する。3社は、施設で得られたデータや利用者に実施するアンケートの結果から、システムの改善やデータの精度向上に取り組む。

矢野高史・NTTデータ第三金融事業本部保険ITサービス事業部戦略デザイン室室長
矢野高史・NTTデータ第三金融事業本部保険ITサービス事業部戦略デザイン室室長

「医療、ヘルスケアにつながる健康に役立つ、これまで一般にはなかったものに挑戦している。われわれはその中で施設を通じて得意とするデータの収集・分析を基に、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)といった個人個人に合うパーソナライズされた健康サービスの開発につなげていきたい。」。NTTデータの矢野高史・第三金融事業本部 保険ITサービス事業部戦略デザイン室室長は施設の狙いについて、こう語った。

NTTデータとNTT東日本では実証期間を通じて、ニーズや事業化の可能性も確かめる。実証で一定の成果が得られれば、地方の企業や地方自治体の施設などへの展開も検討する。