2050年を見据えた地域ICT基盤とデータ活用の視点【討論編】

パネルディスカッションでは登壇者が、「2050年を見据えた地域ICT基盤とデータ活用」について意見交換した。

パネルディスカッションでは、2050年を見据えた地域ICT基盤とデータ活用」をテーマに意見が交わされた。自治体主導で成果を上げてきた愛知県の実践、長年にわたり地域医療連携ネットワークを現場で支えてきた取り組み、そして、ベンダー各社が示した将来を見据えた技術・制度の視点を踏まえた議論が行われた。「超高齢社会が進む中で、単なる医療情報の共有にとどまらず、地域全体の医療・介護・福祉をどう支える基盤へと再構築していくのか。その方向性を探る内容となった。

現場の到達点と持続の壁 運営負担が浮き彫りに

これまでの地域医療連携ネットワークは、医療機関同士を結び、地域医療を下支えする基盤として各地で発展してきた。地域の中核病院や地域医師会、NPO法人などが事務局機能を担い、それぞれの地域事情に応じて運営を続けてきた点は、成果といえる。

一方で、制度的な裏付けが十分でないまま運営が続いてきた結果、人的・財政的な負担が特定の主体や個人に集中し、更新期を迎えて持続性に課題を抱えるケースも少なくないことが、参加者の間で共有された。

2050年に向け問われる主体と費用負担

議論の中で繰り返し浮かび上がったのが、「誰のための地域医療連携ネットワークなのか」という問いだ。

医療・介護・健康のエンドユーザーは地域住民で、制度上、支援主体は自治体である以上、地域医療連携ネットワークの整備・運営でも自治体が重要な役割を担うべきだという考えが示された。

愛知県の事例では、地域課題をデータで可視化し、医療費や介護給付費の抑制といった成果を数値で示すことで、自治体が主体的に関与する構造を築いてきた。ディスカッションでは、2050年を見据えると、こうした「成果を示せる設計」こそが、地域医療連携ネットワークを持続させる前提条件になるとの認識を共有した。

最適解は地域で異なる 一律モデルを超える体制づくりを

一方で、誰が主体となるべきかは、自治体・中核病院・医師会のいずれかに一律に当てはめることはできないという現実的な見方が示された。そして、地域の歴史や人間関係、医療・介護資源の構成で、最適な体制は異なるという共通理解を深めた。

重要なのは、2050年という長期的な視点に立ったときに、運営や意思決定が特定の個人に依存せず、世代交代にも耐えうる仕組みの構築だ。そのためには、行政を含めた体制設計と明確な役割分担が欠かせないことが指摘された。

標準化と相互運用性の“置き換え可能”な基盤設計が重要

技術面では、地域ごとで独自に発展してきた地域医療連携ネットワークが、将来的に分断や非効率を生むリスクについて議論が及んだ。これに対し、どこまでを共通基盤として標準化し、どこを地域独自の工夫として残すのかという視点が重要だとの意見が出た。

また、「HL7 FHIR」などの標準規格を前提に、特定のベンダーに依存せず、将来的に、ほかのシステムに接続・移行できる「置き換え可能性」を意識した設計が求められる。加えて、導入後の運用・管理まで含めた支援体制を整えることが、2050年に向けた技術基盤の条件として語られた。

用語の混同が壁に-「ネットワーク」と「プラットフォーム」の整理が必須に

議論の中では、「ネットワーク」「プラットフォーム」「地域連携システム」といった用語が、立場や文脈によって異なる意味で使われている現状にも話題が及んだ。こうした概念の混同が、データ活用や制度設計を難しくしているという。

そして、通信インフラとしてのネットワーク、情報をやり取りする仕組み、個別業務を支えるアプリケーションを整理し、それぞれの役割と階層を明確にすることが、今後の議論の前提になるとの認識で一致した。

全国プラットフォームと地域ネットの役割分担は対立ではなく補完

また、国が推進する「全国医療情報プラットフォーム」と、地域で運用されてきた「地域医療連携ネットワーク」は、対立構造ではなく、役割の異なる基盤として捉えるべきいう考えを共有した。

「全国医療情報プラットフォーム」は、共通基盤としての役割を担い、地域医療連携ネットワークは地域ICT(情報通信技術)基盤として、多職種連携や後方連携など地域特性に即した運用を担う。患者の同意を起点とした情報共有という原則を共有しつつ、補完関係を築くことが、2050年に向けた現実的な方向性として示された。

DXを目的化しない 地域課題起点で“手段”を選ぶ

終盤では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を目的化することに警鐘を鳴らした。地域によっては対面支援が適している場合もあり、対象者が多い地域ではDXが不可欠になるなど、最適解は一様ではないと結論付けた。

最後に、2050年を見据えた地域医療連携ネットワークは、地域課題と住民ニーズを起点に、必要な部分に必要な技術を組み合わせて設計すべきだという考えに集約され、ディスカッションは終了した。

実践知を次世代へ 国の方針と現場をつなぐ

パネルディスカッションでは、現場で積み重ねてきた地域医療連携ネットワークの運営経験こそが、今後の制度設計や技術基盤整備に欠かせない資産との認識が示された。

2050年を見据えた地域医療連携ネットワークの構築に向けて、国の方針と現場の知見をどう接続するかが問われている。今回の議論は、その接点を考えるうえで多くの示唆が示された。

<問い合わせ先>
地域医療福祉情報連携協議会事務局(株式会社シード・プランニング内)
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