電子カルテ情報共有サービス、多職種連携にも期待
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内閣府の「高齢社会白書」(2024年版)によると、65歳以上の人口は、3623万人。日本の総人口に占める65歳以上人口の割合は、29.1%だった。2070年には、2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると予測されており、日本は高齢化社会が加速している。
この“超高齢化社会"で、今後ますます必要とされるのが地域包括ケアだ。政府は、そのために「地域包括ケアシステム」と呼ぶ仕組みづくりを後押ししている。「地域包括ケアシステム」は、住まい、医療、介護、予防、生活支援を一体的に提供する取り組みを指す。ここでは医療や介護など複数が関わる。そのため、実現には多職種連携を深めることが重要だ。
令和6年の診療報酬改定でも、医療機関と介護保険施設などの連携推進で、協力医療機関の入院の受け入れなどで加算が新設されたことに加え、病状の急変時に平時からの連携体制を構築している医療機関の医師が往診を行った場合についても、介護保険施設等連携往診加算が新設された。生活習慣病管理料の評価と要件の見直しでは、電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、血液検査項目の記載が不要になった。
さらには、多職種との連携を望ましい要件とし、糖尿病患者に対しては歯科受診の推奨を要件とした。地域包括診療料等の見直しでは、電子カルテ情報共有システムで患者サマリーに入力し、診療録にその記録と、患者の同意を得た旨を残している場合は、文書を交付しているものとみなすものとした。訪問診療・往診などの見直しでも、“ICT(情報通信技術)の活用”が文言に挿入されるなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)の効率化を推進する項目も散見される。
加えて、厚生労働省では今、「電子カルテ情報共有サービス」の議論が進められている。電子カルテ情報共有サービスは、「文書情報を医療機関が電子上で送受信できるサービス」「全国の医療機関と薬局で患者の電子カルテ情報を閲覧できるサービス」「患者本人などがマイナポータルを通じて、自身の電子カルテ情報を閲覧できるサービス」で構成する。
文書情報の内容は「健診結果報告書」「診療情報提供書」「退院時サマリ」の3情報、電子カルテ情報では「傷病名」「アレルギー」「感染症」「薬剤禁忌」「検査(救急、生活習慣病)」「処方」の6情報になる。
一方で、電子カルテ情報共有サービスの実現には課題もある。それは、サービスの核である電子カルテの導入が、現時点では中小病院や診療所で遅れていることだ。診療所の半分で電子化が進んでいない。
政府は、導入が進まない診療所に電子カルテを普及させるため、基本機能を必要最小限に絞り込んだ「標準型電子カルテ」と呼ぶシステムの開発を進めている。「標準型電子カルテ」は、「全国医療情報プラットフォーム」「診療報酬改定DX」と並ぶ、政府が推し進める「医療DX」で、三本柱の施策の1つ。2030年には、ほぼ全ての医療機関に普及させる目標を掲げている。
標準型電子カルテの普及は絶対に実現しなければならない。なぜなら、電子カルテに格納される各種の情報は、今後、地域包括ケアに関わる職種にも有用と考えられるからだ。将来的に、標準型電子カルテの情報が地域包括ケアの多職種で活用されれば、効率的な連携につながり、取り組みがさらに一歩進むことになるだろう。政府の動向が注目される。
内閣府の「高齢社会白書」(2024年版)によると、65歳以上の人口は、3623万人。日本の総人口に占める65歳以上人口の割合は、29.1%だった。2070年には、2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると予測されており、日…