電子カルテ・PACS、オンプレ利用の病院の3割がクラウドへの移行を検討 エムネス調査

クラウド型医療情報管理共有システムのエムネス(広島市)は7月30日、全国の30代以上で60代未満の医療関係者を対象にした「医療用情報システムにおける医療DXに関する意識調査」の調査結果を発表した。それによると、オンプレミス型の電子カルテやPACS(医用画像管理システム)などの医療用情報システムを利用する病院のうち、約3割がクラウドへの移行を予定または検討していることが分かった。

クリニックで使用する電子カルテ・PACS
クリニックで使用する電子カルテ・PACS
病院で使用する電子カルテ・PACS
病院で使用する電子カルテ・PACS

クリニックと病院(病床数が200床以下と201床以上の合算)で使用する電子カルテ、PACSのタイプを質問したところ、クリニックの方が病院よりもクラウド化が進んでおり、特にPACSでは、オンプレミス型(院内サーバーで運用)の導入が34.2%、クラウド型(インターネット経由で利用)の導入は31.6%で、ほぼ同率の結果となった。

また、電子カルテとPACSのタイプをクロス集計したところ、電子カルテ、PACSの両方がオンプレミス型の割合が88.2%、電子カルテ、PACSが共にクラウド型の割合は74.7%、電子カルテ、PACSが共にハイブリッド型(両方を併用)の割合は70%と、約7割以上の医療機関が同一タイプを導入している結果となった。

医療用情報システムのクラウド化への意向
医療用情報システムのクラウド化への意向

電子カルテ、PACSのいずれか、または両方でオンプレミス型を使用する医療機関を対象に、今後、クラウド化の予定があるかを質問したところ、約3割が医療用情報システムのクラウド化の予定または検討をしていると回答した。

さらに、勤務先の形態別に、クラウド化への意向をクロス集計し、導入を検討する施設で、想定する導入時期を聞いたところ、クリニックは「1年以内に導入予定」が25%でトップだった。一方、病院では「2~3年以内に導入を検討している」が最多の結果となった。エムネスによると、この結果から、病院の方が決裁フローが長く、導入までの時間がかかることが見て取れるという。

クラウド型システムの導入メリットについて
クラウド型システムの導入メリットについて

クラウド型システムを導入するメリットを質問したところ、「災害・停電時にも安全にデータが保全される」(42%)が最も多く、「バージョンアップなどの保守管理が不要」(28.4%)、「ランニングコストが抑えられる」(25.9%)が次いだ。

電子カルテとPACSの導入タイプ別にクラウド型のメリットの回答をクロス集計したところ、オンプレミス型を使用する医療機関は「災害・停電時にも安全にデータが保全される(電子カルテ:53.8%、PACS:52%)」、クラウド型を使用する医療機関は、「バージョンアップなどの保守管理が不要(電子カルテ:42.1%)」「バージョンアップなどの保守管理が不要/ランニングコストが抑えられる(PACS:どちらも42.7%)」、ハイブリッド型を使用する医療機関では「災害・停電時にも安全にデータが保全される(電子カルテ:48.1%、PACS:56.7%)」が、それぞれ1位だった。

医療用情報システムの導入タイプ別による違いがあった部分は、実際にクラウド型を使用する医療機関ほど「ランニングコストが抑えられる」の回答率が高く、クラウドのコストメリットの高さを実感していることが伺える結果となった。これは電子カルテとPACSで大きな違いはなく、同様の傾向がみられたという。

クラウド型システムを導入に対する不安や課題について
クラウド型システムを導入に対する不安や課題について

クラウド型システムを導入に対する不安や課題を尋ねたところ、「セキュリティーが不安」(45.1%)でトップだった。不安・課題は、利用する医療用情報システムのオンプレミス型・クラウド型の導入タイプ別による違いは、大きく見受けられなかったとしている。

医療DXの進展で、今後特に強化や注目されるべき領域について
医療DXの進展で、今後特に強化や注目されるべき領域について

医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展で、今後特に強化や注目されるべきだと考える領域の質問では「医療データの一元管理と連携」(42%)と「遠隔診療・画像診断」(42%)が最多で、「医療従事者の働き方改革」(35.3%)、「院内業務の効率化」(33.1%)、「AIによる診断支援」(33.1%)が次ぐ結果となった。

エムネスでは、昨今の医療の現場では、医師の働き方改革や少子高齢化に伴う地域医療格差などが問題視されており、その取り組みや課題に対して「医療DXにて補填できないか」という意図が見て取れると分析している。

調査は全国の30代以上、60代未満の開業医、勤務医、技師、経営層、事務長、医療情報・システム部門の男女を対象にインターネット調査で実施。サンプル数は331名だった。