病院の6割が営業赤字、債務超過も大幅増 帝国データバンク調査

帝国データバンクは12月4日、全国の一般病院の経営動向を調査した結果を発表した。それによると、約900の民間病院の61%が営業赤字となった。また、13.6%が債務超過だった。コスト高や人材不足が影響し、特に地方病院での赤字が顕著で、診療報酬のプラス改定を上回るコスト上昇が収益を圧迫し、増収減益が続いている。

病院と診療所の損益動向
病院と診療所の損益動向

2024年度の損益動向を調査した結果、約900の民間病院で、本業の医療活動の利益を示す「営業損益」で、赤字経営だった病院の割合は61%と、前年度の54.8%よりも6.2ポイント上昇し、過去20年で最悪水準となった。開業医など約700の診療所の赤字割合は38.4%で、病院はその約1.6倍となった。

また、経営破綻のリスクが高まる自己資本がマイナス状態の債務超過の割合は、13.6%となり、2023年度の9.9%から3.7ポイントと大幅に増加した。高額な医療機器の導入で借入金負担が増加しやすい一方で、債務償還に必要な収益を確保できない病院が多かった。

営業利益率の平均
営業利益率の平均

営業利益率の平均をみると、2024年度の病院の平均はマイナス1.76%と、大幅な赤字水準だった。前年度のマイナス1.07%に続き、2年連続で赤字水準となった。単年度では過去20年で最低だった。診療所の平均は2.03%で、その差は3.79ポイント、診療所で入院設備をもたない「無床診療所(クリニック)」の2.78%と比べると4.54ポイントと、開業医と比べ収益力の格差が広がった。

2024年度は診療報酬が、0.88%のプラス改定となった一方、コロナ関連補助金の終了、人件費や光熱費、医療材料費などのコスト上昇ペースが上回り、結果的に収益は増えても利益が減る増収減益に陥った病院が多くみられた。

特に医師の労働時間規制など、医療従事者の働き方改革が進んだことで、規制前と同じ量の医療措置に同じ人数で対応することが困難となった病院が多かった。そのため、医師や看護師などの医療スタッフをより多く確保する必要性が生じ、人材確保のために給与水準の引き上げなどで人件費の大幅な増加を強いられた。

一方、人材確保が困難な地方病院では、外来診療などの患者対応力が低下し、病床稼働率の低下や来院患者数の減少につながったことで減収、営業赤字を余儀なくされた。

人件費以外でも、手術室やICU(集中治療室)、CT(コンピューター断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴画像装置)といった医療機器など、24時間の稼働が不可欠な施設では大胆な節電策を講じることが難しく、高騰した電気やガス代の負担を迫られたほか、ガーゼやゴム手袋など医療資材の価格高騰、感染症対策の設備増強や老朽化した施設の建て替えなど設備投資負担も重くのしかかった。

地域別の経営状況
地域別の経営状況

病院本部の所在地で地域別にみると、2024年度の病院経営で最も営業赤字の割合が高いのは「四国」で72.3%だった。次いで「北陸」(71.7%)、「北海道」(64.9%)、「九州」(63.8%)となった。最も低いのは「中部」(49.3%)で、5割を下回る水準だった。

帝国データバンクでは、病院経営は、特に地方部で人口減少と高齢化で医療需要の緩やかな縮小が見込まれており、高コスト構造からの脱却と、病床数に頼らない新たな収益モデル構築の模索が続いていると分析している。また、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の導入による業務効率化や遠隔診療の普及は、地方での経営改善に寄与する可能性もあるが、初期投資負担が重いなど課題もあると指摘している。