東京慈恵会医科大、東京理科大と、脳動脈瘤の破裂リスクを予測するAI開発

東京慈恵会医科大学は12月24日、東京理科大学と、未破裂脳動脈瘤(りゅう)の破裂前データから将来の破裂リスクを予測するAI(人工知能)「POLARIS(ポラリス、Potential Aneurysm Rupture Risk)」を開発したと発表した。

脳動脈瘤の破裂リスク予測AIは、脳動脈瘤のサイズや形状などの形態学的特徴に加え、患者の年齢や既往歴といった臨床情報を含む多次元データを統合することで2年以内の破裂リスクを予測する。東京慈恵会医科大脳神経外科学講座の村山雄一教授、同大先端医療情報技術研究部、東京理科大工学部機械工学科の藤村宗一郎助教らの研究グループが開発した。

研究グループは、まず日本、米国、オランダの3カ国の4機関で2003年から2022年に経過観察・治療が行われた11579例の未破裂脳動脈瘤データを統合したデータベースを構築。このうち2750名・3321瘤(りゅう)のデータの機械学習を行うことで、AIモデルの開発にこぎつけた。

開発したAIは、予測性能を開発段階と別の医療機関のデータ群を使って検証したところ、国際的なリスク評価指標「PHASESスコア」の「AUROC 0.84」を上回る「AUROC 0.90」の予測性能を示した。また、これまで破裂リスクの推定が困難とされてきた、10mm以下の小型の脳動脈瘤でも「AUROC0.88」「感度0.86」で予測可能なことを確かめた。

研究グループによると、従来の類似研究の多くは「破裂した後のデータ」を使用して破裂群と未破裂群を分類しており、実際には破裂したこぶを識別する解析にとどまっていたという。

一方、今回のAIは、破裂前の形態学的特徴と臨床情報だけで将来の破裂リスクを予測できるため、破裂後データに依存しない破裂予測を可能にし、医師の主観に左右されない客観的な治療方針の検討を支援し、くも膜下出血の新しい予防医療に寄与すると説明している。

今後は破裂リスク評価の比較検証や臨床研究を進め、実際の診療現場での有用性を検証する。将来的には、プログラム医療機器(SaMD)の承認を視野に入れ、脳ドックなどの健診現場での活用や、一般利用者向けのウェブサービスなどを含めた提供形態の検討を進める。