富士フイルム、名市大とCT画像でハキム病診断を支援する脳脊髄液腔抽出AIを開発
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AIが高位円蓋(えんがい)部・正中のくも膜下腔、脳室、シルビウス裂・脳底槽を領域ごとに検出することで、体積比の算出が可能となり、ハキム病の診断に重要なDESHの判定を支援する(黄色:高位円蓋部・正中のくも膜下腔、水色:脳室、赤紫色:シルビウス裂・脳底槽)。
富士フイルムは12月22日、名古屋市立大学と、頭部CT(コンピューター断層撮影装置)画像上で脳脊髄液腔の領域を抽出するAI(人工知能)技術を共同開発したと発表した。2024年に開発したMRI(磁気共鳴画像装置)画像上で脳脊髄液腔の各領域を抽出するAI技術を応用した。両者は「治療で改善できる認知症」といわれ早期発見が重要な「ハキム病(特発性正常圧水頭症)」の診断精度の向上に役立つとしている。
頭部CT画像で、くも膜下腔の不均衡分布(DESH)に関係する領域のアノテーション作業を行い作成したデータをAIに学習させることで、頭部CT画像上でDESHに関係する「高位円蓋部」「正中のくも膜下腔」「シルビウス裂」「脳底槽」「脳室」の抽出を可能にした。
抽出結果に加え、領域ごとの体積や領域間の体積比を算出することで、脳萎縮とハキム病の判別に重要な画像所見のDESHの判定を支援し、ハキム病の診断精度向上につながるという。AIは、富士フイルムのクラウド型AI技術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space(シナプス・クリエイティブ・スペース)」を活用し開発した。
「ハキム病」は、脳に水(脳脊髄液)がたまって脳を圧迫し、歩行障害、認知障害、切迫性尿失禁などの症状が現れる高齢者に多い病気。進行性で、症状が重くなると日常生活に介護が必要となる。脳内の脳脊髄液を排除することで症状を改善できるが、症状が進行してから治療を受けても、介助不要な自立した生活を取り戻すことは難しいため、早期発見・早期治療が重要とされている。
一方で、同様の症状が生じる「脳萎縮」との判別が難しく発見が遅れることがあり、判別には、DESHを発見することが重要となっている。しかし、医師の主観で評価されるため、医師により判定が異なることが課題となっていた。
富士フイルムでは、開発したAIの早期市場導入を目指す。同社は、AIが課題の解決につながるとしている。また、転倒などで頭部を打撲して病院を受診した患者が頭部CT検査の受診時、医師がCT画像から打撲による影響だけでなくDESHの兆候も合わせて見つけることが可能になり、「ハキム病」の早期発見の可能性が高まるとみている。