徳洲会など3者、低軌道衛星通信利用の移動型遠隔手術システム実験に成功
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実証実験の様子
徳洲会(東京・千代田区)、大阪大学、手術支援ロボット開発のリバーフィールド(東京・港区)は7月31日、世界初という低軌道衛星通信を使った移動型遠隔手術システムの実証実験を、大阪府八尾市の八尾徳洲会総合病院で6月30日に実施したと発表した。
実証実験では、リバーフィールドが開発した手術支援ロボット「Saroaサージカルシステム」を、八尾徳洲会総合病院の手術室内にサージョンコンソール(操作側)、屋外に配置したトラック内にペイシェントカート(患者側)を配置し行った。
低軌道衛星通信は、米国スペースXが運営する衛星通信サービス「スターリンク」を利用。接続のフレキシビリティ(柔軟性)を確保するため、クラウドに中継用VPN(仮想施設網)サーバーを設置しした。
「Saroa サージカルシステム」は、2023年5月に日本国内で薬事承認を取得しているが、衛星通信や、そのほかの通信を使った地理的に離れた施設間での遠隔手術は、薬事承認範囲に含まれていないため、実証では専用機を使用した。
実験には6名の外科医が参加。通常のロボット手術構成と遠隔のロボット手術構成での比較した。具体的には、臓器の弾力性を再現したトレーニング用モデルを使って、縫合や結紮(けっさつ)などの手技(傷口を縫い合わせたり、糸を結んで固定したりする作業)を行った。
実験の結果、参加した医師6名の全員から、遠隔のロボット手術構成でも、通常のロボット手術時と同様に縫合や結紮などの繊細な手技が可能なことを確認できた。また、フルHD画質で、毎秒4メガビット(Mbps)の滑らかな映像伝送にも成功した。さらに、中継用VPNサーバーで、固定IPアドレスのない環境でも安定した接続性の確保も確かめた。
3者では実験の結果を受け、システムが今後、へき地や離島と都市部の医療格差の是正、災害時の迅速な医療支援、国境を越えた医療支援活動、あらゆる地域で医師のトレーニングに幅広く活用できる可能性があると説明している。