九大病院、ユビーのAI導入でDPC精度向上 年間6500万円超の改善効果を確認
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九州大学病院(福岡市)
Ubie(ユビー、東京・中央区)は12月5日、九州大学病院がAI(人工知能)を活用したDPC(診断群分類)のコーディング業務支援サービス「ユビーDPCサポーター」を導入し、DPCコードを適正化したことで、年間6500万円以上の収益改善と業務時間短縮の効果を確認したと発表した。
「ユビーDPCサポーター」は、LLM(大規模言語モデル)を基盤とした独自開発のAIが、電子カルテのデータと連携してDPCコーディング業務を支援するサービス。
従来のコーディングツールやレセプト(診療報酬明細書)チェックツールが参照するオーダー情報だけでなく、自然言語で記載された医師や看護師など、医療従事者の診療録の内容から、AIが最適な主病、副傷病、手術、処置の選定や変更の示唆を示し、医学的知識に基づいた適切なコーディングをサポートする。

両者の取り組みでは、同病院の過去の症例データで精度検証を実施。経験豊富なコーディング担当者が選定したコードとAIの提案コードを突き合わせたところ、一致率が90%を達成。残り10%も人の目で見直した上でコード変更が妥当なことを確認できたという。
特に、人の目だけでは見落としがちな内容をAIが補完し、大きな収益改善につながる可能性のある事例も確認。例えば、左上葉肺がんの化学療法導入目的で入院した患者が、入院直後に癒着性腸閉塞(へいそく)を併発したケースでは、入院後の経過と治療実態を鑑みて腸閉塞を主病とすることが妥当と判断され、プラス7534点の適正化につながった。
また、右下咽頭がんに対し、下咽頭喉頭頸部(けいぶ)食道全摘と遊離空腸などによる再建術を施行した患者のケースでは、実施された術式内容から、主手術であるK395喉頭、下咽頭悪性腫瘍手術に加え、処置1としてK016動脈皮弁術を選択することが可能なことが示唆され、その結果、プラス9052点の適正化増点となった。
両者は、こうした検証結果に基づき、年間6500万円以上の収益改善効果が見込めることを確かめた。AIならではの網羅的な分析が、提供した医療に見合った診療報酬請求の適正化という成果に結びついているという。
九州大学病院では今後、電子カルテと連携したデータ活用を進める。DPCコーディング業務で蓄積したデータを活用し、リアルタイムで経営状況の把握を可能にすることで、迅速で的確な経営判断に役立てる。また、データに基づいた意思決定の仕組みを構築し、病院経営の最適化を目指す。さらに、今回の検証で確立したAI活用のノウハウをほかの業務にも展開し、病院全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を加速する。
一方、ユビーは、今回の取り組みの成果を踏まえ、「ユビーDPCサポーター」の病院にも展開するなど、提供範囲を拡大する考えだ。