富士通、生成AI「Takane」を核にソブリンAI戦略強化 ナレッジグラフ拡張RAGなど新技術公開

AI戦略を発表する富士通のヴィヴェック・マハジャン・執行役員副社長・CTO(最高技術責任者)

富士通は12月2日、研究開発成果などの説明会「Fujitsu Technology Update」を開催し、注力するAI(人工知能)の戦略や技術を紹介した。

富士通はAI戦略で、「ソブリン(主権)」をキーワードに企業などのニーズ合わせたプラットホームの提供を掲げる。ソブリンは、AI基盤を主導的に運用することを指す。

富士通のAI戦略
富士通のAI戦略

「セキュリティー」「フレキシビリティ(顧客ニーズに合わせた柔軟性)」「ドメインスペシフィック(業界特化)」で考えを生かしたAIプラットホームを展開。ソブリンが不可欠とみるヘルスケア、防衛、行政、金融、製造業を主なターゲットにサービスを展開する。

ヴィヴェック・マハジャン・執行役員副社長・CTO
ヴィヴェック・マハジャン・執行役員副社長・CTO

ヴィヴェック・マハジャン・執行役員副社長・CTOは「ソブリンAIでソフト、ネットワーク、コンピューティング、データ、セキュリティーといったプラットホーム全体を提供し市場を取っていく」と強調した。

AI研究戦略
AI研究戦略

AI技術の研究戦略では、生成AI「Takane(タカネ)」で軽量化や省電力などを進め、AIプラットホーム「Kozuchi(コヅチ)」では、「Takane」やセキュリティー、マルチAIエージェントなどを統合しクラウド型で提供する。

「Takane」に搭載する新技術は、AIのパラメーターを圧縮することでメモリなどの処理量を抑えながら高い精度を維持する「1ビット量子化」や、大型LLM(大規模言語モデル)から、利用する業種や業務に必要な要素のみを抽出し小型AIを作成する「特化型AI蒸留」を投入する。

ナレッジグラフ拡張RAG
ナレッジグラフ拡張RAG

注目は「ナレッジグラフ拡張RAG(検索拡張生成)」と呼ぶ構造化技術。企業内にある、さまざまな業務データをAIが検索し、点と線で表現するナレッジグラフ技術で構造化する。AIが読み込むのが不得意な図表入り文章も高い精度で読み込めるほか、入力データの高速化が図れる。また、実行結果をもとにナレッジグラフやプロンプト(指示)などの自己改善も行える。

医療分野では、電子カルテに蓄積されている非構造化データを生成AIで活用しやすい形に構造化できる。子会社で電子カルテや医療ソリューションを手掛ける富士通Japanが提供する電子カルテのデータ構造化AIでも技術を活用する。

岡本青史・執行役員常務兼富士通研究所所長
岡本青史・執行役員常務兼富士通研究所所長

岡本青史・執行役員常務兼富士通研究所所長は「企業の中のデータを、生成AIに組み込んでソブリンAIにすることが重要だ。ナレッジグラフは、中でも重要な技術の1つ。ナレッジグラフとRAGを組み合わせて生成AIを使っていけるようにする。ヘルスケアでは電子カルテのデータ活用を加速する技術になる」と述べた。