慈恵医大第三病院、「西部医療センター」に改称し26年1月開院 新病院を公開

「東京慈恵会医科大学西部医療センター」(イメージ)

東京慈恵会医科大学附属第三病院(東京・狛江市)は11月28日、「東京慈恵会医科大学西部医療センター」に名称を改め、リニューアルオープンする新病院をメディア向けに公開した。2026年1月5日に開院する。新病院では、診療科の連携を強化し患者に最も適した治療の提供や地域との連携に取り組むほか、AI(人工知能)などのデジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも力を入れる。

「東京慈恵会医科大学西部医療センター」の概要
「東京慈恵会医科大学西部医療センター」の概要

「東京慈恵会医科大学西部医療センター」は、地上8階、地下1階建てで、現行病院本館の隣に新たに建設した。2016年にリニューアルのタスクフォースを立ち上げ、2年をかけてマーケティング調査を実施。コロナ禍による延期を経て、2023年10月に着工、2025年9月30日に竣工した。開院後は外装工事を行い、8月にグランドオープンする。建設費用は非公開。

緩和ケア病棟の有料個室
緩和ケア病棟の有料個室

鉄筋コンクリート造で、敷地面積は7万937m2で建築面積は7144m2。病床数は、494床(一般病棟473床、緩和ケア病棟21床)で、現病院よりも87床を削減した。一方で、個室の数を89室に増やし166室と全病床の約3分の1にまで広げた。また、多人床室は4人床とし、全室にトイレを設置した。

診療科目は、22診療科(26標榜診療科)を設置する。診療部門は、総合診療部、消化器・肝臓内科、脳神経内科、腎臓・高血圧内科、呼吸器内科、呼吸器外科、消化器外科、整形外科、脳神経外科、形成外科などを設ける。また、中央診療部門で、救急部、放射線部、内視鏡部など、診療支援管理部門には看護部、臨床工学部、薬剤部などを置く。

東京慈恵会医科大学は、第三病院のほか、本院(東京・港区)、葛飾医療センター(同・葛飾区)、柏病院(千葉・柏市)を運営する。新病院は、地域密着病院として、北多摩南部を中心に東京の西部地区の医療を担う。

平本淳・東京慈恵会医科大学附属第三病院院長
平本淳・東京慈恵会医科大学附属第三病院院長

平本淳・東京慈恵会医科大学附属第三病院院長は「新病院のミッションは、安全な医療と思いやりのある対応で、地域で一番信頼される病院となること。また、シームレスな医療をもとに地域医療に貢献する機動性と機能性の高い基幹病院になることがビジョンだ」と述べた。

ビジョンに掲げる「シームレスな医療」では、「つなぐ」をキーワードに診療・地域連携・患者のライフステージ医療・デジタル技術の活用などに力を入れる。

新病院では「つなぐ」を軸に5つのキーワードを掲げる
新病院では「つなぐ」を軸に5つのキーワードを掲げる

目玉とする診療では、22診療科が連携し、患者の病態に応じた最適な治療を提供する体制を整備する。その一環で診療科を横断したセンター化を推進。既存のがん診療センター、消化器・内視鏡センターに加え、脳神経内科と脳神経外科が協働する脳卒中センターを新設した。

また、医師、看護師に加え、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカー、理学療法士が連携し、患者をサポートする「チーム医療」を強化。緩和ケア、認知症、感染症対策、迅速対応などの専門チームを充実させる。さらに、患者と家族からの相談や支援をワンストップで受け付ける窓口「患者支援・医療連携センター」も立ち上げた。

地域連携は、急性期から在宅、介護まで支援する体制整備のほか、診療圏の狛江市、調布市、世田谷区などの住民に健康づくりや疾患の予防や早期発見の啓発活動などにも取り組む。ライフステージ医療では周産期から、小児医療、高齢者医療、緩和ケアと患者の人生の段階に応じた医療提供を充実させる。

富士フイルムのAIを搭載した内視鏡システム
富士フイルムのAIを搭載した内視鏡システム

デジタル技術の活用は、まず検査や業務効率化で進める。検査では最先端のITを搭載した医療機器を導入。内視鏡室で、AI搭載の内視鏡4台(オリンパス製1台、富士フイルム製3台)を採用した。同室は5台の内視鏡を運用するが、今後は残り1台もAI搭載機種にする。

キヤノンのAI搭載CT
キヤノンのAI搭載CT

画像診断部門でもCT(コンピューター断層撮影装置)で、キヤノンや独シーメンスのAI搭載システムを導入した。

バーコードを使った受付システム
バーコードを使った受付システム

一方、業務効率化では、中央検査部でバーコードを使った受付システムを入れ、受付業務を無人化。2名いた担当者を別業務に振り分けるなどの効率化を図った。

検体の受付窓口。すべてバーコードで管理し、受付から1時間で検査結果が分かる
検体の受付窓口。すべてバーコードで管理し、受付から1時間で検査結果が分かる

そのほかにも最先端技術として、米インテュイティブサージカルの最新手術支援ロボット「ダビンチ5」の導入も予定する。

平本院長は今後のデジタル技術の導入について「慈恵医大でAI活用などを検討しており、それに沿って、病院でも今後、退院サマリーなど医療文書の作成支援で活用を進めていきたい」と見通しを述べた。