慈恵医大とサイオステクノロジー、手術動画から真珠腫の残存を検出するAIモデル開発

東京慈恵会医科大学は10月22日、ITシステム開発などのサイオステクノロジー(東京・港区)と、内視鏡・顕微鏡の真珠腫の手術動画から、病変の残存を検出するAI(人工知能)モデルを開発したと発表した。世界初という。

慈恵医大耳鼻咽喉科学講座の宮澤渉助教、高橋昌寛講師、小島博己講座担当教授らと、サイオステクノロジーの野田勝彦、吉田要らの研究グループが開発した。

慈恵医大とサイオステクノロジーは、2020~2023年に実施された真珠腫手術の88例(144本)の動画を解析対象に、内視鏡と顕微鏡の手術時の映像をAIに学習させることで、病変残存の有無を自動判定するシステムを構築した。

AIモデルは、複数の深層学習モデルを組み合わせたアンサンブル予測を採用。内視鏡と顕微鏡のいずれでも安定した診断精度を示したという。平均予測精度は内視鏡で81%(感度77.3%、特異度84.7%)、顕微鏡では78.6%(感度79.1%、特異度78.2%)だった。

中耳真珠腫は、進行すると骨破壊や難聴、顔面神経まひを引き起こす疾患で、手術による摘出が唯一の治療法となっている。しかし、病変の残存や再発が生じることもあり、手術技術に高度な熟練が必要になるという。両者は開発したAIモデルが、限られた症例数でも高精度で病変の有無を判定できるため、中耳真珠腫の治療で課題解決に役立つとみている

現在は概念実証段階だが、他の施設との共同研究を進め、臨床現場での活用を目指す。また、将来的には、リアルタイム術中支援や若手医師の教育支援などでの応用も見込んでいる。