日本医師会、医療DXで地域医療持続性から電子処方箋と電子カルテ義務化に反対表明

6月22日の日本医師会定例代議員会

日本医師会は6月22日、定例代議員会を開催し、松本吉郎会長が「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「医療機関の経営危機の改善」などについて、日本医師会の考えを表明した。

「医療DX」では、地域医療を守るため「すべての医師が、現状のままでも医療が継続できる」ことが大前提として、電子処方箋や電子カルテの義務化には断固として反対すると述べた。また、電子化を希望する医師に、できるだけ導入や維持がしやすい環境整備を国に働きかけていると説明した。

「骨太の方針2025」についても言及。さまざまな医療DX施策に対し、政府を挙げて強力に推進するとうたわれ、体制整備のための必要な支援を行うことや、必要に応じて医療DX工程表の見直しを検討することが明記されており、日本医師会の主張を一定程度取り入れてもらえたとの見解を示した。その上で、十分な財政支援の必要性や、工程表ありきで拙速に進めるべきではないなど、現場の声をしっかりと主張していくと述べた。

「医療機関の経営危機の改善」では、「骨太の方針2025」の策定に向け、日本医師会が税収などの上振れ分の活用、社会保障予算の目安対応の見直し、診療報酬などの賃金・物価の上昇に応じた公定価格の適切な反映、小児医療・周産期医療体制の強力な方策の検討を主張してきたと強調。自由民主党、公明党の社会保障制度調査会などで説明し、国民医療を守る議員の会で、医師会の主張を踏まえた決議が採択されたことを受け、松本会長が、石破首相に2度にわたって医療現場の窮状を直接訴えたと述べた。

その結果、「骨太の方針2025」では、自民党政調全体会議や公明党など与党内で、医療機関の経営危機や、物価高騰、賃金上昇対応について、日本医師会の要望に添った議論が行われ、社会保障関係費の記載が修正され、物価・賃金対応分を「加算する」という「足し算」の論理となり、年末の予算編成で診療報酬改定に期待ができる書きぶりとなったとした。

また、「税収等を含めた財政の状況を踏まえ」と明記されたことで、日本医師会が「経済成長の果実の活用」として求めていた、税収などの上振れ分の活用の視点が盛り込まれ、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する。」と記載されたことで、日本医師会が求めてきた賃金と物価の上昇に応じた公定価格などへの適切な反映が明記されたと述べた。

さらに「次期報酬改定を始めとした必要な対応策において、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響などについて、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う」と記述され、注釈で2025年春季労使交渉の平均賃上げ率の5.26%などの数字が明記されたことで、次期診療報酬改定で、この数字が念頭に置かれるとの認識を示した。

加えて、著しく逼迫(ひっぱく)した医療機関の経営状況改善のため、診療報酬だけでなく、補助金での対応も不可欠と強調。今回の骨太の方針を確実に実施できるように、25年夏の参議院議員選挙、2025年度補正予算編成、年末の予算編成で2026年度診療報酬改定の財源確保が極めて重要として、財務省財政制度等審議会などが引き続き、歳出改革努力を求める中で。医療経営の危機の打破と、高齢化、高度化、物価高騰と賃金上昇に対応できるよう、あらゆる機会を通じて、引き続き政府与党に求めていくと話した。

そのほか、現場の声を医療政策の決定過程へ的確に反映させるべく、日本医師会の組織強化を全力で行っていくことや、新たな地域医療構想に対して、医療と介護の連携や「包括期機能」など日本医師会の提案の具体化するためにガイドラインや現行の医療計画の中間見直し、次期介護保険事業計画との整合性も見据えた議論を進めると述べた。

地域医療を担う人材確保では、厚労省から医師偏在是正に向けた広域マッチング事業を受託し、会内にプロジェクト委員会を設け、体制を整えると共に、医師の要請や派遣などについて大学関係団体などとの連携強化していくと述べた。

医薬品については、医療現場では医薬品供給不安が続いており、補助金などの十分な予算措置も含め、現場の声を踏まえた要望をしっかりと今後も国に伝えていくとした。OTC(一般用医薬品)については、OTC類似薬を保険適応除外する政府の動きを受け、医療費適正化の目的のみでの過度なセルフメディケーションやスイッチOTC化を進めることは反対すると述べた。