医師のPHS着信回数80%減、kubellが武蔵台病院とチャットツール活用効果を調査
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ビジネスチャットを手掛けるkubell(クベル、東京・港区)は10月15日、武蔵台病院(埼玉・日高市)と実施した、ビジネスチャット「Chatwork」を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)で、医師と医療従事者の負担軽減と効果の調査結果を発表した。
武蔵台病院は、埼玉県日高市の整形外科、内科、リハビリテーション科など15科、病床数約100床を持つ地域密着型の病院。救急医療から急性期治療、慢性期治療、リハビリテーション、訪問看護などの在宅医療関連もサービスを提供する。
同院は2020年の新型コロナウイルス感染症流行を受け、スタッフ間のコミュニケーションと情報共有の円滑化で、「Chatwork」の利用を開始。その後、医師の働き方改革に備え、「Chatwork」やモバイル電子カルテなどのICT(情報通信技術)ツールを活用し業務効率化を推進している。
調査結果では、院内の主な連絡手段を口頭や電話や紙から「Chatwork」に変更したことで、送信者は事象が発生したタイミングで、すぐにメッセージの送信が可能になり、受信側も自身の手があいたタイミングで確認できるため、不急の連絡で患者対応や作業などを中断する必要がなくなったことが分かった。
その結果、通信手段で利用するPHSで、医師一人当たりの平均着信回数が、1日あたり31.5回から5回と約85%減少、PHS平均発信回数は23.3回から2.1回と約90%の減少し、医師の負担軽減の効果が見られた(2022年10月と2024年5月との比較)。
また、医師が回復病棟の入院患者への回診も、一カ月あたりで約36.7時間がかかっていたが、回診に必要な情報を事前にチャットで連絡することで、2024年5月には約22.1時間となり、約40%減った(同)。
さらに、夜勤看護師から日勤看護師への交代時の申し送りを紙や口頭からチャットに変更したことで、1回あたり平均16.4分かかっていたが、申し送り時間ゼロになった。日勤看護師から夜勤看護師への申し送りでも、大幅な短縮効果が出たとしている(2022年10月と2024年4月との均比較)。
武蔵台病院では、調査を通じて、医療と看護体制を見直し、看護師を一カ所のナースステーションではなく、複数の場所に点在させ、患者に近い場所で業務ができる体制に変更し、「Chatwork」で、離れた場所でも情報連携のスピードや質を落とさずに対応できる取り組みも実施。
その結果、患者を直接見守る時間が増え、2023年12月には抑制帯の使用率ゼロを実現した。また、寝返りなどの体位変換を頻繁に実施できるようになったことで、2023年7月には褥瘡(じょくそう)発生率がゼロとなり、現在も継続している(2024年9月末時点)。
さらに、患者からのナースコールでの呼び出しは、1日あたり、平均259回から平均150回に約42%減少した(2022年10月と2023年10月との比較)。
kubellでは、調査結果から、チャットツールなどのICTツールを活用することで、医療従事者間の情報連係が効率的で効果的になり、医師や医療従事者の負担が軽減されるとともに、生産性が向上し、入院患者のケアや見守りの時間が増加し、医療の品質が向上したとしている。
調査は、武蔵台病院に勤務する医師、看護師、スタッフ、入院患者を対象に、2022年10月~2024年9月末に実施した。