MDV、PHR「カルテコ」で、AIが健診結果から34疾患の発症リスク予測する機能
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「未来予測レポート」の画面
メディカル・データ・ビジョン(MDV)は9月27日、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)「カルテコ」で、AI(人工知能)が、健康診断結果から疾患の発症リスクを予測する機能「未来予測レポート」を、10月31日から開始すると発表した。
「未来予測レポート」は、MDVが持つ医療機関から提供された診療データベース(DB)を基に、ユーザーがPHRアプリに健診結果を入力すると、AIが予測モデルを使って、3年以内の疾患の発症リスクを算出する。脳卒中、虚血性心疾患、心不全、緑内障、白内障、逆流性食道炎、胃十二指腸潰瘍、食道がん、胃がんなど34の疾患の発症率を予測できる。
機能は、実患者数4674万人(2024年2月末時点)の国内最大規模というDBを活用し、AIの予測精度を高めているのが特長。健診で受けていない項目があった場合でもAIが、ほかの検査値から予測を行い補完して算出する。
予測結果は、「疾患発症リスク」としてパーセンテージで表すほか、同性同世代と比較したリスクに換算し直した「疾患倍率」も表示する。
「リスクシミュレーター」と呼ぶ機能も備えており、生活習慣を見直して検査数値などに変化があった場合に、その数値を入力すると疾患発症リスクがどのように変わるかを知ることもできる。
27日に開催したメディア向け体験会で、平井真司・事業企画本部運用企画部門長ゼネラルマネージャは、機能の目的について「健診結果だけでは分かりにくい疾患リスクを明確にすることで、これまで健診だけで終わっていた人が二次健診や検査を受けるといった行動変容、病気予防や健康維持の意識を促すのが最大の狙い。病気を診断する機能でない」と説明した。
AIは、ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)の予測AI「Prediction One(プレディクションワン)」を使用する。SNCでは「ニューロンネットワーク」などのAIのアルゴリズムを使って34の疾患のごとに予測モデルを作成した。「カルテコ」の予測機能とAIをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携し、データが入力されるとクラウド経由でAIが計算し、アプリに予測結果をリアルタイムで返す。
予測精度は、AIの精度の評価指標「AUC」で、脳卒中、虚血性心疾患、食道がん、胃がんなどが80%以上、高血圧、高尿酸血症、胃十二指腸潰瘍などは90%以上。34の疾患で80%以上の精度を達成しているという。
体験会に出席した、松原雅信・ソニーネットワークコミュニケーションズ 法人サービス事業部サービス企画開発部事業開発課データサイエンティストは「当社は病院などにAIを提供しており医療でのAI活用の知見があることに加え、今回、MDVの質の高いデータを利用できたことで、非常に高精度の予測モデルを構築できたと思っている」と自信を見せた。
同じく、会に出席した長嶋浩貴・東京センタークリニック院長は、医師の立場から「今後、医療は治療から予防というヘルスケアが重要になってくる。そして、予防には一人一人でデータが異なり個別化の対応が求められてくるが、AIの進化はその助けになる」と述べた。
機能はサブスクリプション(定額課金)で提供し、料金は月額550円。ユーザーに会社などが実施する定期検診のほかにも、MDVが販売する簡易検査キットを使って、そのデータから定期的にリスク予測してもらうことを狙って定額制にした。MDVでは、機能を広告でアピールするほか、医療機関向けシステムを手掛けるグループ会社を通じて、取引先の病院などに利用を呼び掛けユーザーを獲得する。2025年で1万5000人から3万人の利用を見込む。
機能は現状でデータの蓄積ができず、利用するごとに情報を入力する必要がある。そのため、今後は健診や予測結果データの経年記録機能も視野に入れる。また、予測結果に対してユーザーに健康改善のアドバイスする機能の搭載も検討する。