フィリップス、無痛・着衣で約15分の乳がんMRI検査を紹介 高濃度乳房にも対応

(左から)高原太郎・高原クリニックイノベーティブスキャン院長、安部美佐子・フィリップス・ジャパン社長、奥秋知幸・フィリップス・ジャパン・プレシジョンダイアグノシス事業部長

フィリップス・ジャパン(東京・港区)は10月1日、乳がんの早期発見・治療を啓発する「ピンクリボン月間」に合わせ、乳がん検診の受診を妨げる要因とMRI(磁気共鳴画像装置)検査の可能性をテーマにしたメディア向けセミナーを、高原クリニックイノベーティブスキャン(東京・世田谷区)で開催した。セミナーでは、高原太郎院長が、乳房を圧迫せず、検査着を着たまま約15分で撮影できる乳がんMRI検査「ドゥイブス・サーチ」の特長や、高濃度乳房への対応、普及の課題を解説した。

安部美佐子・フィリップス・ジャパン社長
安部美佐子・フィリップス・ジャパン社長

セミナー冒頭では、安部美佐子・フィリップス・ジャパン社長が登壇。安部社長は、フィリップスが患者の治療成果の向上、医療従事者の業務負担軽減、医療機関の経営への貢献、患者や家族の検査・治療の負担軽減を、製品開発で重視していると説明した。また、今回、紹介する乳がん検査について、痛みや恥ずかしさへの不安を軽減できる点に触れ、「女性の一人として、本当にこの情報を広めたい」と述べた。

奥秋知幸・フィリップス・ジャパン・プレシジョンダイアグノシス事業部長
奥秋知幸・フィリップス・ジャパン・プレシジョンダイアグノシス事業部長

次いで、奥秋知幸・プレシジョンダイアグノシス事業部長が、フィリップスの画像診断事業を紹介した。奥秋事業部長は、高齢化に伴う検査需要の増加や医療スタッフの不足に対し、フィリップスでは画像診断機器でAI(人工知能)やデジタル技術を活用した高画質化、撮影時間の短縮を進めているといい、「患者が快適に検査を受けられる環境づくりと、患者や疾患ごとに適した画像診断の実現に取り組んでいる」と話した。

高原太郎・高原クリニックイノベーティブスキャン院長
高原太郎・高原クリニックイノベーティブスキャン院長

セミナーの主要プログラムでは、高原太郎・高原クリニックイノベーティブスキャン院長が、乳房を圧迫しない乳がんMRI検査「ドゥイブス・サーチ」について解説した。

「拡散強調画像(DWI)」は正常組織とがん組織で水分子の動きが異なる性質を利用する
「拡散強調画像(DWI)」は正常組織とがん組織で水分子の動きが異なる性質を利用する

「ドゥイブス・サーチ」は、MRIで全身のがんを調べる「DWIBS(ドゥイブス)」を乳房に応用した検査方法。「DWIBS」は、拡散強調画像(DWI)を応用し、細胞が密集したがん組織では水分子が動きにくくなる性質を利用して、病変を画像として描き出す技術。高原院長が2004年に開発した。造影剤の注射が不要で、放射線の被ばくもないという。

乳房専用のコイルを使い、検査着を着たままうつぶせで撮影する
乳房専用のコイルを使い、検査着を着たままうつぶせで撮影する

検査では乳房用の台にうつぶせになって画像を撮影する。撮影時間は約15分。マンモグラフィー(乳房X線撮影)のように乳房を挟んで圧迫する必要がない。また、検査着を着たまま受けられるため、乳房を直接見せることへの心理的な負担にも配慮できるとしている。

胸元が開きにくい襟元と、乳頭が目立ちにくい二重の生地を採用した検査着
胸元が開きにくい襟元と、胸の形が目立ちにくい二重の生地を採用した検査着

専用の検査着は、うつぶせになっても胸元が開きにくい襟元や、胸の形が目立ちにくい二重の生地を採用。着衣のまま乳房の位置を合わせるための目印を設けたほか、ウエストのひもの位置を横にずらし、体の下に結び目が当たることを避けるなど、撮影時の姿勢に合わせた工夫も施した。

高原院長は、乳がんの現状について「国内で年間約10万人の女性に発症し、比較的若い年代にも生じている。働く世代が進行した乳がんにかかると、本人だけでなく家計や家族、職場への影響も大きい」と話し、早期発見の重要性を訴えた。また、乳がん検診の受診率にも触れ「現在の受診率は51%で、国の目標である60%に届いていない」と説明し、受診を妨げる要因の1つとして「検査時の痛みがある」と強調した。

また、自身もマンモグラフィーを体験したことを踏まえ「痛みの感じ方には個人差があり、強い痛みを感じる人の負担が周囲に理解されにくい」と指摘した。その上で、「乳房の圧迫による痛みを避けられることに加え、手術痕や皮膚の症状などから乳房を見せることに抵抗を感じる人にとっても、着衣で受けられる『ドゥイブス・サーチ』には意義がある」と語った。

乳腺組織の占める割合が多く、マンモグラフィーで白く写る範囲が広い「高濃度乳房」についても解説した。「高濃度乳房」は、厚生労働省が受診者への通知を進める方針を示している。高原院長は「『高濃度乳房』は病気ではない。そして、マンモグラフィーでは乳腺も病変も白く写るため、乳腺に隠れて病変を見つけにくくなる場合がある」と説明した。

「高濃度乳房」でマンモグラフィーでは確認が難しかった病変を、「DWIBS」で描出した症例
「高濃度乳房」でマンモグラフィーでは確認が難しかった病変を、「DWIBS」で描出した症例

高原院長は、マンモグラフィーでは確認が難しかった病変を「DWIBS」で捉えた症例を提示し「MRIは乳房を立体的に撮影でき、胸壁に近い部分を含め、病変の位置や広がりを把握しやすい。『高濃度乳房』に対して超音波検査と並ぶ選択肢になる」と話した。

導入施設でテスト撮影や撮影指導を行い、画質を確認・調整する
導入施設ではテスト撮影や撮影指導を行い、画質を確認・調整する

一方で、造影剤を使わないMRI検査でも「装置や撮影条件で画質に差が出る」と述べ、「乳がん検診に活用するには、脂肪の信号を適切に抑え、病変を捉えられる画質を確保することが重要」と強調した。

「ドゥイブス・サーチ」では、導入施設を訪問し、テスト撮影や画質の評価、技師への指導を行っているという。高原院長は「撮影方法の標準化を進めている。また、読影には専門的な訓練が必要で、個人の経験や技能に依存する部分もあるので、今後はAIの開発も検討する」と語った。

ドゥイブス・サーチ」導入施設(2026年5月29日時点、開設見込みの施設を含む)
「ドゥイブス・サーチ」の導入施設(2026年5月29日時点、開設見込みの施設を含む)

「ドゥイブス・サーチ」を受けられる国内施設は、現在で約100施設に上るという。導入には必要な性能を備えたMRI装置と乳房専用コイル、撮影・読影の体制が必要だが、対応できるMRIを既に保有する施設もあり、「設備と運用体制を整えることで、実施施設をさらに増やせる」(高原院長)とみている。

検査成績について、高原院長は複数施設の約2500例をまとめたデータを示し「受診者1000人当たり約14人のがんが見つかった」(同)と説明した。ただ、データは投稿中や未発表のものを含んでおり、また、マンモグラフィーと同じ条件で比較した研究ではないという。高原院長は、「今後、成績を蓄積して比較研究につなげたい」と話す一方、「痛みでマンモグラフィーを受けられない人は比較研究に参加しずらい」という課題を挙げた。

「ドゥイブス・サーチ」の普及では、「受診者の費用負担が一番の課題」(高原院長)という。その解決策として、高原院長は企業がマンモグラフィー検診に出している補助金を、MRI検診でも使えるようにする方法を提案した。

例えば、MRI検診の費用が2万2000円で、マンモグラフィー検診の補助金が8000円の場合、その補助金を適用できれば、自己負担は1万4000円になる。高原院長は「こうすれば、企業は補助額を増やさずに、従業員の検査の選択肢を広げられる。当面は、自治体や企業による費用補助の拡大を目指す」と話した。

最後に「ドゥイブス・サーチ」について「現在マンモグラフィーを受けている人に検査方法の変更を求めるわけではなく、痛みなどを理由に受診できていない人の選択肢にしたい」と語った。そして「『とにかく痛くて検査を受けられない』という人を救いたい。受けやすい検査を通じて、社会全体で乳がんの発見機会が増えてほしい」と述べた。